人気MMOのマイナーシナリオキャラ『ゴブタロウ』に転生したおっさん、飯バフが神すぎて異世界を余裕で渡り歩く
テツみン
第1話 オレは……誰だ?
「ん? ここはどこだ?」
見慣れない家が立ち並ぶ場所にオレは立っていた。どうして、こんなところにいる?
そして――
「オレは……誰だ?」
バカみたいなことを言っているように思われるが、オレは真剣だった。
なにもかも思い出せない。
その時、背中にドンという衝撃を感じた。
「おい、チビ! 道の真ん中でボーッと立っているんじゃないよ。邪魔だろ!」
そんな声が聞こえ、オレは振り向く。後ろが見えない。
――ん? フードか、これ?
何やら、分厚い生地でゆったりとした服をオレは纏っていた。
これじゃ後ろが見えない。フードを外した。
やっと視界が広がる。後ろには大柄な男がいた。コイツがオレに声をかけてきたのか?
なにやら、驚いた顔でオレを見ているのだけど、どうしてだ?
すると……
「……ご」
――? ご?
「ゴブリンだぁ!」
――えっ?
男が叫ぶと周りにいた人たちが一斉にオレをみた。
ゴブリン? ゴブリンって、ゴブリンだよな?
なぜ、オレを見てゴブリン?
そう言えば、やたらと目線が低い。相手が大柄に見えていたのは、自分の背が低かったからだ。どうして?
だが、そんなことを考えている余裕などなかった。
「きゃあ!」
「ゴブリンだ! おい、冒険者を呼べ!」
「――はい?」
すると、向こうから片手剣を持った男かオレに向かってきた!
ちょ、ちょっと待て! オレを殺すつもりか⁉
その剣を振り下ろそうとするので、慌てて逃げ出す。
「逃げだぞ! 追え!」
「うわぁぁぁぁっ!」
オレは一目散で逃げだ。どこへ逃げればいいのかわからないが、とにかく、相手の反対方向へ走るしかない!
後ろを見ると、剣を持った男たちが増えていた。
「こらっ! 待てぇ!」
そんな声が聞こえてくる。
「カ、カンベンしてくれ!」
なぜ、オレは追われているんだ?
それにゴブリン?
もう、何が何だかわからない。
気づいたら町を抜け出していた。すぐ近くに森が見える。あそこへ逃げ込もう。
振り向くと、追っていた男たちの姿が遠くに見える。どうやら、オレのほうが足が速いようだ。
あれ? オレってこんなに足が速かったか?
まあいい。とにかく森の中に逃げ込んでから考えよう。
茂みの中に飛び込むと、足場は石ころや倒木ばかり。それでも、オレはピョンピョンと飛び越えながら森の奥深くへと向かった。
オレって……こんなに運動神経が良かったか?
それから、数分走り続ける。
「ぜえぜえ……ったく、なんだってんだよ……」
立ち止まり、振り返った。誰ひとり追ってくる気配はない。
息が整うまでその場で立ち尽くすと、遠くに人の声が聞こえた。
「どこに行きやがった、あのゴブリン?」
「ったく、逃げ足だけは速いぜ」
「どうする?」
「ああ、ゴブリンが一匹で行動するとは思えない。近くに群れがいるに違いない」
「それじゃ、冒険者ギルドに頼んでクエストを発行してもらうか?」
「ああ、そうすればカネも出る。それからゴブリンを狩ろう」
遠くにそんな声が聞こえた。
遠く? うん、確かに遠い。おそらく百メートル以上離れているだろう。
でも、どうしてそんなに離れているのに声が聞こえる? そもそも、どうしてそう思った?
何が何だかわからない。
「いったい……オレは何なんだ」
そう呟いて、自分の手を見た。
ギョッとした。
肌が緑色だったのである。
「ちょ、ちょっと待て……」
手で自分の顔や頭を触る。髪の毛がない。
たしかにオレは薄毛に悩んでいたが、多少は毛の感触があった。これはもう完全に丸坊主だ。
「ウソだろ? オレの大事な髪が――」
そうショックを受けるのだが、それだけでない。口を触ると冷たく硬いモノに触れる。先が鋭く、手の皮が切れそうだ。
それが牙だとすぐにわかった。下あごから生えている。口を閉じてもその牙が外にはみ出していた。
「おいおい、マジかよ」
緑色の肌――
頭髪がない――
下あごの牙――
それで思い当たる生物がいる。
「いやいや、それって空想の生き物だろ?」
そう、オレはゴブリンになっていたのだ。
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