第7話
離婚をして、家を出て一人になった。
しかし本当に自由になった。と思えるのは母が亡くなったときだろうなと思う。
今でも理想の娘でいることをやめられないのだから。
母は非常に愛情深く私を育ててくれた。ときに過干渉であったかもしれないが、ちかって毒母ではなかった。
年相応に鬱陶しいと反発もしたし、周りに比べたら厳しく管理されたと思うこともある。
それでもどんなときも母は私の味方でいてくれる。愛されていると疑うことがなかったのだから、立派な母だと思う。
早くに夫を亡くし、寡婦となり20年以上よく頑張ったと思う。
病弱な3人の子供たち、大病を患う夫、長男の嫁という立場、多くの役割を背負う中で、自分の幸せなんて考える余裕もなかっただろう。今の私は贅沢なものだとつくづく感じる。
だから母が今眺めている幸せな絵、3人の子供たちがそれぞれの家庭を築き、忙しいながらも幸せに暮らしている様をそのまま見ていてほしい。
それが私にできる最後の親孝行なのだと思う。
人生で一番穏やかな時間を過ごしている最中に、娘が離婚した、孫を置いて家を出たなんて、知られるわけにはいかない。
自分の人生って何だったのだろうなんて思わせてはいけない。
したがって、私は離婚したことを親族には誰にも話していない。親族とつながりのある人にも。子供たちも知らない。
元夫は極端に自閉的な人なので、義両親も知らないようだ。未だに敬老の日や義両親の誕生日には私が贈り物を手配しているのだから、笑えてくる。
でも義両親のことはとても好きで、やはり幸せでいてもらいたいと思えるので、これ自体はストレスではない。
母には月に数回は会うようにしていて、時々は子供も連れていく。そこで大変だけど幸せに暮らしている私を見せてあげる。それが私にできる精いっぱい。
早く死んでほしいなんて望んでいないけど、いつこの均衡が崩れてしまうのだろうかと怯えてはいる。その矛盾しているような、していないような感覚が案外しんどい。
私、こじらせてるなと、自分で自分が嫌になる。
でも、行ってみればほんの数時間。数回行けば、一カ月。そのうち一年。
今日もなんとかやり過ごしている。
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