第6話
雨の音に耳を傾けて眠り、途中目覚めてもまだ降ってるなと確認すること数回。
雪になるかもという予報ははずれたようだ。少しだけ気合を入れて、ベッドから出た。
やっぱり行こう。次の週末は行けないし。
母のところへ向かう中央線に揺られている。
東京駅でお弁当を買い、ピエールエルメのケーキを奮発した。
母はピエールエルメなんて知らないだろうけど、クリスマスに顔を出せないし、私だってクリスマスは一人。
この際、親孝行を兼ねて贅沢しよう。
ふたつ買ったケーキは一つずつ美しい箱に入れられて、あのオシャレな紙袋に入れられている。
アクセサリーのギフトボックスさながらである。
お弁当屋さんで散々聞かれた、「有料のレジ袋は必要ですか?」は聞かれなかった。
スーツケースを引く人たちの多国籍な会話、お弁当エリアの喧騒もどこへやら。
静かなイートインでコーヒーでも飲もうかと思ったがやめた。
ジャラジャラ何かが付いているジャケットを着たいけてないカップルの男性が「どうせならここで食べた方がいいっしょ?」と連れの女性に言い、「とりあえず出しとくから」とレジで会計していた。
やっぱりいけてない。
どうせなら銀座でも丸の内でも素敵なカフェで過ごせば良いのに。
この後の予定も知らないくせに、時間やお金の使い方、エスコートのスタイルに違和感を感じてしまう。私も老害だなと思うことが多くなった。
そう、これから母の家へ行く。
早くに父が他界し、私が結婚して実家を出てからはずっと一人暮らし。
私が羨ましいと思う一人でもあり、悩ましいと思う一人でもある。
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