第9話
翌朝の放送で、俺の生徒会長当選が発表された。生徒会長と副会長は放課後に生徒会室に集合するように言われた。
そして迎えた放課後、俺と氷織は生徒会室に集まっていた。
「というわけで君たちが新しい生徒会長と副会長だ。書記と会計は君たちが選出してくれ」
生徒会担当の先生に説明を受け、俺たちは頷く。
説明を終えた先生は生徒会室から立ち去った。残されたのは俺と氷織だけだ。
「ここが生徒会室か。広いな」
長机が長方形に置かれており、パソコンが四台置かれている。
「それで、残り二人どうするの」
「一人は綿矢の返事待ちだが、もう一人だな。氷織、誰か心当たりはないか」
「私も友達が多い方じゃない」
「確かにな」
さて、困った。生徒会に相応しい人間を入れなきゃいけないが、俺には心当たりがない。
生徒会室のドアが開いた。綿矢が立っていた。
「綿矢、来たのか」
「ええ、返事をしにきたわ」
綿矢はそう言って俺の前まで歩み寄る。
「世話になるわ。あなたたちの生徒会で働かせてちょうだい」
「助かるよ」
俺は綿矢に手を差し出す。綿矢は俺の手を取ると固く握手を交わした。
心なしか氷織の視線が冷たい気がする。
「それで、もう一人のメンバーは決まっているの?」
「それが心当たりがなくてな」
「普通は立候補した時に当てをつくっておくものよ」
綿矢に釘を刺される。まあ確かに急な思い付きの立候補だったからその辺の準備を怠ったのは俺が悪い。
「私に任せて。一人、心当たりがあるわ」
「おう、悪いな」
とりあえずあと一人の人材は綿矢に当てがあるらしい。
「それで綿矢はどっちの役職やりたい?」
「私は会計を担当するわ。予算の計算とかは難しいから」
「それは助かるな。生徒会経験者がやってくれるとありがたい」
「それで、プランはあるの? この学校を廃校から救うアイディア」
「それがまだ何も考えてないんだよな」
「そんなことだと思ったわ」
氷織が手を上げる。
「制服……デザインを変更するっていうのはどう?」
「制服ね。確かにうちはセーラー服だし、味気がないのはわかるわ。なるほど、制服をお洒落にして人気を得ようという作戦ね」
「うん。制服が可愛かったら女子は興味を持つはず」
「ただ今からだと来年の春には間に合わないわね。再来年になるわ」
「それでもいいんじゃないか。何もやらないよりはマシだろ」
氷織のアイディアは実際有効だと思う。
中学時代、女子の間でどこの高校の制服が可愛いとかいう話を聞いたことがある。女子が高校を選ぶ際、制服の可愛さで選んでいる節はある。
「あとは今期でやっておきたいのは校則の変更だな」
「そうね。私は今の厳しい校則が好きだけど、人気が出ない要因にはなってるわね。うちの学校は校則が厳しいで噂になってるぐらいだし」
綿矢は柔軟に意見をくれる。もっと反対されるかと思ったが、俺たちの方針に合わせてくれているようだ。
「まあ本格的に活動するのは明日からだし、今日は駄弁って帰るか」
「あなたそれでも生徒会長なの」
綿矢が呆れた様子で溜め息を吐く。
俺としてはあまり肩肘張って疲れるよりも、ある程度は気楽にやりたい。もちろん仕事は真剣にこなすが、雰囲気の問題だ。
「楓はこういうやつ」
「それで聞きたかったのだけど、あなたたち付き合っているの?」
綿矢の質問に俺は内心飛び上がった。
別に付き合っていることを隠しているわけではなかったが、綿矢の口から出てきそうにない質問だっただけに驚いた。
「まあな。付き合ってる」
俺がそう答えると綿矢は「そう」と短く呟いた。
「まあ付き合っているのは構わないけど、生徒会に私情を持ち込むのはやめてよね。生徒会室でいちゃつこうものなら私はすぐに生徒会から抜けるから」
「肝に銘じておくよ」
「ならいいわ」
俺としては少しぐらいは氷織と甘い空気になることを期待していなかったといえば嘘になるが。だが、綿矢に生徒会を抜けられる方が痛い。ここは俺が我慢しよう。
「でもちょっと羨ましいわ。あなたたちは寄りかかれる人がいて」
「綿矢は彼氏とかいないのか」
「いるように見える?」
「見えないが」
「そうよね。私は今は勉学に集中するべきだときだと思っているから。でも憧れがないわけじゃないわ。いつかはとは思う」
意外だな。綿矢も色恋に興味があるのか。
綿矢は眼鏡をくいっと持ち上げると目を光らせた。
「でも、それとこれとは話は別。私の目の黒いうちは生徒会でいちゃつこうなんて思わないことね」
「わかってるって」
俺は苦笑しながら頭を掻く。どちらにせよ、氷織が公の場でいちゃついてくれるとは思えない。
俺は氷織とコミュニケーションが取れればそれでいい。
氷織の目的を叶えるために生徒会に入ったのだ。俺が頑張らねばどうする。
「それじゃ今日は解散だな」
「ええ、それじゃまた明日」
そう言って綿矢は生徒会室を出ていく。俺と氷織は戸締りを済ませ、生徒会室を後にした。
氷織は静かだ。会話は少なかった気がする。明日からはもう少し話せるといいな。俺はそんなことを思いながら職員室に急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます