第28話 VS否定者

第28話 VSヴァーサス否定者ネガティオ

(Against the Negatio)


∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧


 「ノエマ……さ。」


 「ん?」


 「……いや、ごめん。やっぱなんでもねぇ。」


 「なっ!……なに?気になるからちゃんと

いって。」


 「い、いやっ!……なんか、ノエマ変わったなあって……」


 「まあ、色々あったし、ただそう思っただけ……ですって!!やめて!すんませんごめんなさいもう許してください!おねがいしにゃっ」


 噛んだ。


 そしてアルテナは心のなかでこう思った。


 『 完全に分かった。こいつ(ノエマ)の笑った顔がたまに鬼みたいにみえる理由……』


『おれに対する怒りの裏返しなんだってことがな!』


 「ぷ……あははははは!!!」


 「ノエマさん?」


 「アルテナ……ぷぷ。……やっぱばかみたい。だって心の声もぜんぶ……わたし」


「なんとなくきこえてるんだよ?」


「あぁん?!」


 硬く握られた拳を再び前に突き出したノエマにビビったアルテナは、逆ギレしそうになったが結局あきらめた。うん。勝てない。こいつにはぜってぇ。そう、正直に思った。


      ズンンッッッッーー


 急に辺りの空気が重くなった。


 「フィィィィ……!!!」


 「おいおい……まじかよ。なんか……空気変わったぞ………」


 「しっ!……だれか来る…………」



 ギイィィイ・・・・・・


 ダアアアーーーーン!!!!


 木々が次々と倒されていく。


 そして森が焼かれるにおいが鼻の奥に抜けていく。するとーー


 目の前で『 闇色の光 』が伸びて来て、二人と一匹の前の地面が黒く焼け焦げ、土が闇色に滲んでいく。


 「おや、おやおやおやおや。こーんなところに隠れてたんですねー。まだほーんのちいさな子供ただのガキではないですか。ねえフェイシー?」


 「お前と来んのだけはほんっっとに嫌だったんだけどウチ……もうめんどいからさっさとっちゃお」


 急に姿を見せたその二人は、そう言って暗く凍えるような冷たい目でノエマ一行を見下みくだしている。


 一人は、黒くてやたら縦に長い帽子をかぶってる長身長髪で。話すたびにクネクネ動くめちゃくちゃ怪しい男。


 もう一人はいかにも悪そうな女で、豹柄の上下ジャージ姿。これから何を始めるのか、気だるそうに相方へ悪態をついてる。


 「くっ……おまえら一体なんなんだ!!」

 「フィー!!!」


 アルテナとフィリムがノエマを

守るような形を作る。



 「んーまーちょっとぐらいなら教えてさしあげてもいいーんですがねー。」


 「生憎タイムイズなんちゃらってやつですからねーこのご時世。っと。わたくしの名は


 「 ティース・ブラッシュアップ 」


 それとわたくしの連れその他一名。」


 「……その他って……心外だわマジで。ってかこいつらに名乗るイミないっしょ」


 「まあまあまあまあまあ。そうおっしゃらずにー。彼女は、フェイシー。


 「 フェイシュアル・クレンザース 」


  僕たちわたくしたち


 『 否定者ネガティオ


  ですー。」



 「「……!!?」」


 「ん?んんー??まさか、わたくしたちのこと……知らない?」


 「惑星フィデリスの謀反者……

 あああ!もー死刑確定の囚人でしたっけねー?

そのアルテイシア・リュクシエルの可愛い愛娘。次なる『真の観測者』」


 「ノエマちゃんって、クソチビ共の後ろに隠れちゃってるあなたのことですよねー?」


 「ノエマちゃんを『 未然に消す 』のがわたくしたちの仕事なもんでしてね?……ちょっと最初はしくじっちゃいましたが。」


 「……!! あの時、地面が崩れる前、急に倒れて来たデカい木もおまえらの仕業だったってえのかよ……」


 「はぁぁ?なに今更。」

「あ!てか遺跡ブチ壊したのもウチらだよ?」


 否定者=フェイシーのその言葉にーー



 ノエマの心のなかでーー


 今までやっとの想いで


 繋ぎとめていたものが



 ブチッ 


 と音を立てて



 切れた


∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧


 「じゃあー時間も勿体ないんで」

 「はーじめちゃいましょうかねー?」


 否定者=ティースが左手を高く上げたとたん、

大地に黒い雷が落ち、辺り一帯を黒炎が焼き尽くす。


 「ティース!!遊んでるヒマねえかんな!」


 続けてフェイシーの生み出した黒い光の刃が、空気を引き裂いてアルテナとフィリムに襲いかかる。


 瞬間ーー


 バッッガアアアン!!!!!!


 大爆発が起きて。


 土煙がそこにいた全員の視界を奪う。


 「あれれれれ?もしかして子供ガキだからって手えー抜いちゃいましたー?」


 「フェイシー……んならさっさとやっちまえよおぉ!!!!」


 その時だった。

 暗闇の空から突然紅い閃光が走りーーー


 紅い光が真っ直ぐティースの胸を

真上から射抜くーー


「ぐっっっっぼへあぁぁ!!!!!!!!」


 そしてティースは地面に

四つん這いになって嘔吐した。


 「……くぅ〜今のはきいた〜〜〜」


 ティースはすぐに再び起き上がると、土埃の舞う視界の中で紅い光を自分に浴びせた敵を探した。



 しだいに視界がクリアになって。

その姿を見たティースは驚いた。


 そこには、少年と異星生物を背に悠然と立ちはだかる少女ーー


 ノエマの姿があった。


∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る