第2話ノイズ

 私は、よく思うんだよ

 この世界がもっと美しいかなって。

 素直に言えば、そう思えることが、とても、いいことのように思うの。

 彼と別れて、しばらく月日が経ったの。

 思い出って、振り返ると悲しいね。

 初めてデートした日に、あだ名をつけられた。

 突飛な人で、お茶目なことを言う。

 遊園地のメリーゴーランドで「ミッキ」と呼ばれた。

 美紀と言う名前の私は、その日のダイアリーに何度も彼の名前を書いた。

 結局別れるまで、あだ名で呼べなかった。

 私は、彼のあだ名をダイアリーの中でだけ呼んだ。

 こんなことを言うと、なんだか臆病だって言われるかもしれないけど、恋って、そういうものじゃない?

 大事にしている人だから、そう思うのよ。

「ミッキ、今度さ」

 と彼の声がノイズのように、聴こえてる。

 失恋の理由は、相性を言われた。

 私のどこがって訊くと、僕は、と言い淀んで、君の幸せのためと彼は言った。

 「本当はね」

 と彼は言った。

 海外に、目標を見つけたんだ。

 ついていくと私は言った。

 でも、私は大学生で、そんなことはできないって、すぐに思い直したのは、フラれて自宅に帰ってからだった。

 彼の目標は、言わないでおくけど、夢を追うとか、どうなの?

 と私は、彼の写真立てを壁に投げた。

 にべもなく言うあの人の目は美しかった。

 初めて、二人で過ごした夜に、見せた目とは違った。

「ミッキ、素敵だよ」

 と言ってくれたことを思い出して、泣いたよ。

 別れてから、月日が経ったって言った。

 私は、ダイアリーを見返して、もし、彼をあだ名で呼べたら、もしかしたら、留まったのかなと考えて、苦笑いを浮かべた。

「ミッキ、さようなら、幸せになってね」

 ふざけんなよ。

 と言いたかった。

 でも、私は、勇気とかじゃなくて、彼の瞳が好きだった。

 別れさえ爽やかで、嫉妬するよ。

 友達から彼のことを訊いた。

 渡米していったことを。

 夢がかなうといいねなんて言いたかった。

 空港とかで。

 そんなに良くできた女を演じることができたなら。

 遊園地のぬいぐるみを見て、私に似ているって言ってくれた。

 ひどいよ。

 私はダイアリーを閉じて、彼を忘れるということが、考えられないと思ったけど、友達からのメールに、「どっかいこ、美紀」とあって、優しい友達に会いに、出かけることにした。

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ショートストーリーストレンジャーズ 鏑木レイジ @tuhimurayuki

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