第6話ナイトサウンド

 夜になると、夢を見る。

 ささやかなリズムに、小さな声を潜めるように。

 綺麗なものが好きだという。

 少しだけ汚れた食器を、持ったまま、置くと、物事の意味を探る。

 空想を奏でる旋律がある。

 ジャンルはないが、音楽的な意識で、色々な想念を、浮かんでは消えていく意識の底で、サウンドが鳴っている。

 ナイトサウンド。

 歌を歌う夜の鳥が、眠りにつく頃、冒険に果てた戦士の行きつく場所を誰も知らない。

 透き通るような輝きに、目をくらまして、目をつぶると、浮かんできたイマージュを、形作るナイトリズムに、体をよせて、もたれるように、椅子に座ったまま、鼓動を孤独にして、立っている戦士は何処にいる。

 こんな気分が乗る日はライトを消して、ライドするままに、旋律を消したら、思い出も消して、そのままで、夢を見ようか。

 戦士は、夜を渡るとき、空を見ない。

 でも、僕らは、空の星々を感じて、鼓動に意識をセットしたら、ノスタルジックな気分で、大地を走る獣が記憶にいたことを、故郷の平野で、佇んでいたネイチャーサウンドを、ライドするままに、ポートレートを伏せるように、このモーメントをリップアウトして、笑い声をあげる。

 夢を伏せたら獣は消えた。

 大事なことは、酔いしれるように、悲しみを抱くこと。

 それも清らかなものにだけ。

 こんな夜は、記憶も伏せて、僕は、面倒くさいことを忘れる。

 ただ清らかな悲しみと美しい想いだけを、そばに置きたい。

 そして、夢が覚めると、僕らは無感動になるんだ。

 現実に、想像力が向くのなら、しょうがないことだけど、それほど現実に価値はあるかと考えると、せめて、僕らの夜と夢は、ナイトサウンドに奏でるポートレートを記憶に浮かべて、酔いしれるのは、僕らの勝手だろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る