第2話ハートのタトゥー

 キスの余韻を感じる。

 恋人の残像を街角に探した。

 どうして人は独りなんだろうか。

 と問いかけた青春に、打ち込んだことを、想い出す。

 壁に叩きつけるというのは、何もないからなのかと考えた。

 でも、もがくほどに、遠ざかる夢が、目を細めても、見えやしない。

 夜を求めて、愛していた。

 夜の意味を考えて、行き止まりに行きついて、夜の街にインタープレイ。

 無罪なものを好きになった時、彼女は、ハートのタトゥーを腕に入れたと言った。

 僕は、悲しくなった。

 消えないハートを入れる必要はない。

 何て言えばきれいごとかと考えた。

 そして、街が朝になって、人が一人一人と消えていく電車に吸いこまれて。

 その美しさも知っていた。

 朝日のイノセント。

 疎ましかった。

 誰もいない裏路地には、ごみ箱と、その跡が転がっていた。

 まるで僕らの傷跡のように。

 それでも、青春には自由があるなんて誰が言えるのか。

 僕は昨夜のハートのタトゥーの少女を思い出す。

 彼女は、最後に泣き崩れた。

 意味を聞いた。

 ただ首を横に振るだけだった。

 過去がどれほど僕らを傷つけても、僕らは自由を信じるべきだ。

 彼女のタトゥーは綺麗だった。

 僕は、通りを歩くと、家路についた。

 綺麗とは何なのかと考えて、きっとそういうことなんだと思った。

 むしろ素知らぬ顔をして、通り過ぎていく人群の中を、通り過ぎる街の中にいる。愛するという意味を探って、それは一瞬だけの優しさしかないのかもしれないと思った。

 彼女はそれを知っていた。

 僕は、そっと、家路の中で、空を見上げて、ハートの意味を、思った。

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