8話 意識の芽生えと波紋

あの日、琉華が莉音を守ってくれた出来事から、莉音の心は少しずつ揺れ始めていた。

放課後、一人で帰り道を歩きながら、莉音は小さくつぶやく。


「…琉華さん、かっこよすぎる…」


見た目も男前、人気者で明るく元気。そして、自分を守ってくれる強さ…。

胸がドキドキして、自然と意識せずにはいられない。

「私…あんなに頼れる人を、ずっと…意識しちゃうかも…」


学校では相変わらず、琉華は生徒たちの注目を集め、アイドル的存在として笑顔を振りまいていた。

しかし、その人気を快く思わない一部の男子生徒が、嫉妬から復讐心を抱く。


「俺も昔のことを忘れねえ…琉華に一泡吹かせてやる」


些細な噂や陰口が広がり、次第に琉華の人気は揺らぎ始める。

周囲の友達は必死に琉華を守ろうと声をかけるが、琉華本人は次第に塞ぎ込み、教室にも来なくなる日が増えていった。


「琉華…どうして…?」

莉音は胸が痛み、心配でたまらなくなる。

人気者の琉華が、急に暗い表情を見せることに、初めて戸惑いを覚える。


友達が励ましに訪れるたび、琉華は小さく首を振る。

「もう…俺はいい…」

そんな言葉の裏に、孤独と不安がにじむ。


莉音は自分の胸の奥で、初めての恋心が芽生えたことを自覚する。

そして、その感情と同時に、琉華を守りたいという強い気持ちも生まれていた。


「…絶対、琉華さんを助ける」

小さく決意を固める莉音の瞳は、今までにない強さを帯びていた。


こうして、二人の距離には新たな波紋が生まれる。

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