7話 守る力

放課後、教室の片隅で、莉音は一人でプリントをまとめていた。

しかし、廊下を歩く生徒の一部が、ささやき声で彼女を注視していた。


「おい、有栖川莉音、今日は一人でいるのか?」

「ちょっと俺に教えてくれよ、さっきの件…」


声は威圧的ではないものの、微妙に圧がかかる言動に、莉音は肩をすくめて小さく震える。

「……う、うん、大丈夫です…」

心の中でそう言い聞かせながらも、緊張が消えない。


その様子を、友達の一人が見て、急いで廊下に飛び出す。

「琉華!莉音が…あの男に困ってる!」


琉華は一瞬で表情を変え、力強く走り出す。

「何!?俺が放っておけるわけないだろ!」


廊下で現場に到着した琉華は、男に向かって低く、鋭い声を発した。

「やめろ!お前、何やってんだよ!」

その声だけで、周囲の生徒たちは一歩引く。


男が言い訳しようとした瞬間、琉華はさらに近づき、真剣な目で見据える。

「莉音に近づくな。俺の目の前で嫌なことはさせねえ」


莉音は後ろに下がり、安心したように息を吐いた。

「琉華…」

琉華はふっと微笑み、そっと莉音の肩に手を置く。

「大丈夫、俺がいるからな」


二人の間に、穏やかで守られた空気が流れる。

「ありがとう…本当に…」

莉音の瞳には、少し涙がにじんでいたが、その顔には安心の笑みも浮かんでいる。


琉華は優しく手を握り返し、囁いた。

「俺が守るって決めたんだ。だから怖がらなくていい」


嫌がらせは一瞬で収まり、二人の絆はさらに強く、静かに刻まれていった。

この日、莉音は初めて、琉華の強さと優しさを同時に肌で感じることになった。

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