5話 嫌がらせ
ある日の昼休み、教室で莉音はプリントを整理していた。
すると、後ろから小さな声が聞こえた。
「ねえ、有栖川莉音って、新しく入ってきた転校生でしょ?
なんか、琉華と仲良くしてるんだって?」
嫌味を含んだ声に、莉音は一瞬固まった。
「そ、そんなことないです…」
小さな声で答えるが、周囲からの視線がじわりと痛い。
放課後も、机の上のペンが隠されたり、ちょっとした嫌がらせが続く。
莉音は胸がざわつき、笑顔も少し消えかけていた。
その様子に気づいた琉華は、すぐに莉音の元へ駆け寄った。
「おい、何してんだよ!俺の前で嫌なことすんじゃねえ!」
琉華の鋭い目つきに、嫌がらせをしていた生徒たちは一瞬ひるむ。
しかし、嫉妬の矛先は琉華にも向けられた。
「琉華まで!?」
教室の空気が一気に張りつめる。
そんな時、琉華の友達たちも心配そうに駆け寄った。
「大丈夫か、莉音!?」
「琉華も、無理しなくていいんだぞ」
二人を囲むように立ち、励ましと守る気持ちを示す友達の姿に、莉音は少し安心した。
琉華は深呼吸して、毅然とした声で言った。
「俺は莉音を守る。だから、余計なことは二度とするな」
嫌がらせはピタリと止み、教室には穏やかな空気が戻った。
莉音は少しだけ涙をこぼし、琉華に小さく笑いかける。
「ありがとう、琉華…」
「バカ、当たり前だろ。俺の大事な奴なんだからな」
その日以来、二人の絆はさらに強くなった。
友達の優しさも手伝って、外からの障害も乗り越えられる。
小さな困難を通じて、互いを思いやる気持ちが、より深く心に刻まれたのだった。
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