第4話「門前の攻防」

👑 第4話「門前の攻防」


>TIME: 3330:10:30 RELIABILITY: DECREASE

>ENVIRONMENT_STATUS: FAVORABLE

>DQ_ACTIVITY: ACTIVATED


1.ケヴィンの絶体絶命

ギルベルトは獣のような形相で、馬上の俺たちめがけて一気に走り出した。


ケヴィン:

「チビ、走れ!」

俺は手綱を力の限り引き、チビの腹を蹴りつけた。チビは短足ながらも優秀な馬だ。門にいる衛兵はまだ混乱している。助けが来る前に、あの野獣に追いつかれる。

ギルベルトの大剣が、風を切る音と共に馬の尾のすぐ後ろを掠めた。


メイ:

「ひっ!」

メイが鞍の上で小さく叫び声をあげる。

俺は文官だ。戦闘の訓練などロクに受けていない。しかし、計算はできる。


* 結論: このままでは追いつかれる。


俺は即座に決断した。チビに門の前に向かって走らせつつ、腰に提げていた報告書作成用のインク壺を、ギルベルトの顔めがけて投げつけた。


ギルベルト:

「くそっ!!死ね、事務屋が!」

インク壺はギルベルトの頭を直撃し、濃い黒インクが彼の顔全体に飛び散った。視界を遮られたギルベルトは一瞬体勢を崩したが、その憎悪に満ちた咆哮は止まらない。

門の上から、衛兵の一人がようやく矢を放ったが、それはギルベルトの肩を掠めるだけで終わった。


ケヴィン:

「門を閉じろ!早くしろ!」

俺は叫んだ。門はゆっくりと閉じ始めた。

ギルベルトは、閉まりかける門の隙間に、その巨大な大剣を滑り込ませた。


ガアァン!


大剣が門扉に挟まり、門は完全に閉まらない。

俺はチビを門のわずかな隙間から滑り込ませた。メイの体が壁に擦れるギリギリのところで、なんとか砦の内側に滑り込む。


ケヴィン:

「衛兵!すぐさま門を閉めろ!ギルベルトが門を塞いでいる!」

俺が門番たちに叫び、馬から飛び降りる間もなく、門の外から轟音が響いた。

ギルベルトは、挟まった大剣の柄を文字通り体当たりで押し込もうとしていた。門全体が内側に軋み、石造りの壁が悲鳴を上げた。


ギルベルト:

「ケヴィィィィィィン!返せ!俺のだ!!!!」

ギルベルトの叫び声が、砦全体に響き渡った。


ケヴィン:

「馬鹿力めっ」

俺は強がって悪態をついた。


2.ユス団長の登場

砦の中に入っても、安全ではなかった。巨大な門が閉まる直前、その隙間に差し込まれた大剣の音は、メイの耳の奥に今も響いている。

メイはケヴィンの背にしがみついていた。彼の心臓の早い鼓動が、メイの胸にも激しく伝わってくる。


メイ:

(彼も怖いだろうに、私を庇ってくれているの。「あんたの居場所だ」と言って連れてきてくれた場所なのに、ここもまた、血と暴力に満ちた場所なのだろうか)

門が完全に閉まらないまま、ケヴィンは女を抱きかかえるように馬から降ろした。


ケヴィン:

「メイ、ここから走れ!まっすぐ、あの大きな建物に行け!」

ケヴィンは焦りながら、門の向こうで暴れるギルベルトを衛兵たちに任せ、女を強く押し出した。


ケヴィン:

「誰に会っても、記憶がないこと、この上着の男に助けられたことだけを言え!いいな、絶対にだ!」

女はただ頷くことしかできなかった。彼の焦燥感が、嘘ではないことを物語っていた。

そして、ケヴィンの視線の先、砦の奥にあるひときわ大きく立派な建物から、一人の男が小走りでこちらに向かってくるのが見えた。

その男は、全身に金の飾りがついた真新しい鎧を着て、怒りよりも先に、困惑と不機嫌を顔に浮かべていた。


ユス団長:

「ケヴィン!何を騒いでいる!貴様は雑務で出たはずだろうが!門前での騒乱は規律違反だぞ!」

お人好しでケヴィンの幼馴染。団長ユスの登場だった。


3.ユス団長と「神の子」


ケヴィン:

「団長!報告だ! ギルベルトは発狂し、神の子を連れ去ろうとしています!こいつがその神の子だ!」

俺はメイを指差す。メイは恐怖で震えながらも、団長の側までかけて行った。俺の上着の端を不安そうに握りめている。

隊長は、メイの破れた服と裸足、そして怯えた顔を見て、完全に動きを止めた。


ユス:

(この子が、あの死の森に・・?)

信じられないと言う顔だった。この砦は最寄りの村からも離れている。狭い砦だ。家族持ちの、ここに連れてきていない家族の顔までみんな知っている。そしてこんな子は、ここで見たことがない。

団長の目が、俺が着せた上着の背中に縫い付けられた魔除けの紋様を見る。


ユス:

「神の子」

感極まった声で団長は言う。なんとも、俺の刺繍入り上着が出来すぎな演出になった。団長はお人好しで、弱い立場の者を見過ごせない。適切な相手にメイを繋いでくれるだろう。こんな辺境で身を守るには権力か暴力しかない。

隊長はメイの様子に心底心を痛めているようだった。

隊長の顔から不機嫌な色が消え、代わりに驚愕と興奮が浮かんだ。彼はゆっくりと、メイの前に膝をついた。


ユス:

「大丈夫か、君。君が神の子……いや、君を助けに来た」


4.ギルベルトの排除と秘密の共有

その時、門からはミシミシと軋みが聞こえ始め、周囲から動揺した声が漏れる。

次には鉄塊が砕けるような轟音が響いた。ギルベルトが無理やり大剣を梃子にして門をレールからずらしたのだ。

怪力で押し動かしたのか、歪んだ門が開きかかった。隙間から、泥と血にまみれたギルベルトの顔が覗き、怒鳴りつけた。異常な執着だ。


ギルベルト:

「その女を俺に渡せ!そいつは俺の獲物だ!俺のものに触れるな!!!!」

隊長はギルベルトの顔を見た瞬間、顔色を変えてさらに叫ぶ。完全に目がイッている。


ユス:

「ギルベルト?貴様、どう言うことだ!?どうして門前で騒ぎを起こすんだ!!神の子捜索は国の命令だろう?どうしてお前の獲物になるんだ!?直ちに投降しろ!」

団長は怒鳴ったが、ギルベルトは聞く耳を持たない。


ギルベルト:

「渡せ!渡せ!俺の神の子だ!」

ギルベルトは再度門を押し始めた。門番たちが慌てて槍を構えるが、恐怖に腰がひけている。

俺は隊長の耳元に囁いた。


ケヴィン:

「隊長、あいついつも以上におかしいんです。森で何かに遭い、完全に発狂している可能性がある」


ユス:

「何か?」


ケヴィン:

「捜索隊、王都からの兵もこっちからの持ち出しも、傭兵も含めてほとんど誰も帰ってきてないんですよ。俺、いつも通りサボって最初から最後まで森の入り口にいたんで」


ユス:

「お前な・・」

小言を言おうとして団長を止め、ケヴィンは続ける。


ケヴィン:

「この女(メイ)を隠し、すぐに隔離してください。そして俺は、彼女を救出した功績と、ギルベルトの反逆の報告書を書き上げます。もうみんなあいつのせいにしちまいましょ。死の森への化け物討伐隊の話なんて出たら、いくら命があっても足りない。報酬は……わかっていますね」


5.地下倉庫へ

隊長は俺の顔を一瞥し、一瞬躊躇したが、すぐに強い決意を込めて頷いた。


ユス:

「わかった!ケヴィン、お前は至急、この女をいつもの地下倉庫に隠せ。あそこの扉が一番頑丈だ」

小声でケヴィンに告げ、団長は門を再び見る。


ユス:

「衛兵!ギルベルトを捕縛せよ!抵抗するなら殺しても構わない!」

隊長は鍵を俺に投げ渡した。俺は素早くそれを受け取り、メイの腕を掴んだ。


ケヴィン:

「行くぞ、メイ!ここが一番安全だ」

俺はメイを連れて、騒乱の中心を避け、中央の大きな建物へと急いだ。

メイは再び恐怖と混乱に支配されていたが、ケヴィンの腕を強く握り返し、上着に縫われた魔除けの紋様を強く握りしめていた。


>TIME: 3330:11:50 STATUS: CANDIDATE_INCREASE

>HQ_FLUC: LOW

>DQ_LEVEL: UNSTABLE_RISING

>AUDIT PROCESS: CONTINUING OBSERVATION

執行官:「ハムスターが増えたな」

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