第32話・森の中の廃屋

 まぁ、いいか。

 芸能界のことはよく知らないが、紹介料を貰えるとしても大した額ではないだろう。

 わざわざ出向いたのに、ありがとう、の一言で終わらされられたら骨折り損だ。

 それに少女の人生が成功したところ、貴重な魔術は……

 人脈が広がれば手に入るかもしれないな。

 ただ、そのためには常に少女と連絡をとり続けて、良好な関係を築いておく必要がある。

 そのためには、研究中であっても何かしらの連絡があれば対応しなければならない。

 そんなのは無理だ。お楽しみの最中に相手なんてしてられない。

 他人の人生より自分の研究。

 みんなそうだろ? それを他人優先なんて、私から見ればその人は神様だよ。

 だから神様なんていないんだ。

 というわけで、デメリットの方が多そうなので、少女は少女の人生を歩んでもらうことにしよう。

 私はとっとと何か食べられる場所を見つけないと。

 少女がパンを食べているのを見たら、余計にお腹が空いてしまった。

 もうあの少女と会うことないだろうと思いつつ、お店探し再開だ。

 それから20分ほど歩いたところで、小さな食堂を見つけたが、やはり観光客相手に商売している雰囲気はない。

 でも店内は綺麗で、町の人相手にのんびりやっている雰囲気だ。

 メニューも豊富で、毎日通ってもしばらくは飽きないだろう。

 そのメニューの中から、パン、グラタン、サラダ、スープ、プリン、コーヒーをいただく。

 普段は少食な私だが、今回の件で非常にエネルギーを使ったためか、ちょっと多めに頼んでしまった。

 それをなんとか食べ切り、満足したところで目的地へ向かう。

 食堂から歩くこと1時間程度。町からはどんどん離れ人の気配も消えていき、やがて森の中へ。

「あったあった」

 情報通り、そこには木々に囲まれた建物があり、家屋というより小屋と言った方が妥当な廃屋。

 この建物は昔どこの誰だかわからない人が勝手に建てた物らしい。

 でも撤去にも費用がかかること、町中にあるわけではないので景観を損ねることもない。

 それに犯罪に使われたり事故が起きた形跡もない、ということでずっと放置されているそうだ。

 外観はボロボロで窓も割れており、入り口のドアも一部が外れて傾いていることから、放置されて十数年以上は経っている。

 そんなボロ小屋なので、中には虫がいたり獣の住処になっているだろうが、そんなものは改造殺虫魔術(違法)で一撃だ。

 バッグから取り出した、拳ぐらいの球体を割れた窓から放り込む。

 本来なら密閉した方が効果は高いが面倒くさかった。

 放り込まれた殺虫魔術は一瞬で強烈な煙を吹き出すものの、窓、入り口から溢れた煙は屋根に到達するまでには消える。

 臭いは少々残るが、私ここにいまーす、とアピールする狼煙のようなものを上げるわけにはいかない。

 そんなことをしたら消防団が文字通り飛んでくる。

 地域を守る、警察、消防、救急は体力が必須であり、飛行魔法が使用できないと出世できないらしい。

 それで何度怒られたことか……と、そんな経験を活かした改造殺虫魔術(違法)だ。

 次にここを寝ぐらにしている獣、特に魔獣が飛び出して襲ってきた時のために、魔銃(違法改造及び違法所持)と、小型手榴弾(自作・違法所持)を取り出し構える。

 本当は魔銃ぐらいは常に身につけておきたいところだ。私のような美少女なんて、いつ狙われるかわかったものではないし。

 だが規制強化された地域でバレると、即逮捕からの没収、そして拘留、罰金となるので、仕方なくバッグに隠している。

 それに加えてバッグ内には高度な迷彩魔術を施しているので、荷物検査でバレることもない。

 ただ技術の進歩は目覚ましいものがあるので、私も研究を重ね、常に上をいっておかなければならない。

 まぁその研究が楽しいんだけど。

 ちなみに、バラしたスナイパーライフルは別の形にも組み上げられるので、誤魔化すことが可能。

 本当は魔銃サイズでロケットランチャーぐらいの威力を出したいのだが、現段階では魔銃サイズに組み込める魔導回路には限界がある。

 魔導回路の術式を圧縮すればなんとかなりそうではあるが、研究用魔力もバカにならないし、今はこれで我慢するしかない。

 かといってロケットランチャーをバラしても、持ち歩くにはキャリーバッグとか使えば良いが、いざ使用時に担ぐには私には重すぎて狙いが定まらない。

 私って本当、華奢な美少女なんだよな。

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