第4章 混乱

 現代―ボクスタリア市地下

 「ガスがたまっているぞ!後退だ!」

 先頭の案内人が声を張り上げる。

 ゆっくりと後退し、また別の道を探す。

 地獄のような日々だったが、奴らを追い出すためと思えば耐えられた。

 もうすでに、1週間も粉塵にまみれて行進している。

 重要そうな廃墟。

 郊外の帝国の旧政府施設のようだ。

今度こそ、大丈夫だ。

そう鼓舞し続け、やっと見つけることができた。

だが、運命は無情だった。

そこにあったのは、シェルターと、疎開したであろう指導者層と思われる骸と灰だけだった。

 都心方面はもっとひどく、研究所も、政府施設もすべて消えている。思えば当然だ。核爆発の爆心地だったのだから。

「なぜだ!」

 思わず声を荒げる。

 俺たちは、いや俺はどうなるのだろう。

 仲間の一人が口を開く。

 「残念ながら、もう潮時でしょう。これ以上地面の下をはい回ることで、奴らが追い出せるとは思えません。」

 周りの仲間もそれに同調し始める。

 俺は焦って言った。「待て!まだ探していないところはたくさんある。俺たちは英雄になれるんだ。」

 仲間はあきらめたようにため息をつき、立ち去り始める。

 ほかの仲間も、同調して去り始める。

 そして、振り返り、こう言った。「一週間分の食料、酸素ボンベと目印は残しておきます。どうかお元気で。」

 なんだと?今までの恩を忘れたのか?いやだいやだいやだ。まだ終わりたくない。

 俺を見捨てるやつも、抑圧するものも、すべて壊して…

 ふと、横穴に気が付く。なんてことはない。ただの横穴。

 だが、俺はその穴の向こうに何かを見た気がした。

進んでみると、木の根がびっしりと張り巡らされた空洞になっている。

行き止まりだ…

目の前には木の根。もはやこれまでだ。

ふと、錆びているが、かすかに光沢がある何かが目に入る。小さな、金属の箱。

気づけば、がむしゃらになって掘り出していた。

「取れた…」数時間の格闘の末、ついに箱をとることができた。箱にあったのは一枚の写真と無数のメモ。大陸語で書かれている。それは、イリオスのメモだった。

だが、そんなことは俺には関係がなかった。写真にはイリオス・ヴァクルと書かれている。そこに映っていたのは――有毛人だった。

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