33話 怪獣とぬいぐるみ


街外れの小さな雑貨屋。

色とりどりのぬいぐるみが並ぶ棚の前で、フローナが立ち止まった。


フローナ「わ、この怪獣のぬいぐるみシェルに似てる!」

メリサ「あれま、ほんとだよ」

レン「そっくりですね」

シェル「そうか?」


フローナは怪獣をぎゅっと抱えて笑った。


フローナ「可愛い〜。これ買おうかな」


その瞬間、シェルがぬいぐるみをひょいっと奪い、

元の棚に戻す。


フローナ「あ、ちょっと! 何するの!」

シェル「似てる本人がいんだから、いらないだろ」

 

フローナ「怪獣・・・」

と呟いた後、しょぼんと肩を落とす。


少し離れた場所から二人のやり取りを見ていたメリサとレン。


メリサ「レン君、あれは黒だねぇ」


レン「えぇ、間違いありませんね」

人差し指でクイッと眼鏡を上げる。


コキア(今日も平和だなぁ)




♦︎その日の夜。

 

夕飯の後、皆んなでトランプゲームがしたいとシェルが様子を見に来た。


コンコン。


シェル「フローナー、入るぞ?」


そっと扉を開くと、フローナはすやすや眠っていた。

枕元にはフローナがこっそり買った怪獣のぬいぐるみが置いてある。

彼女はそれを大事そうに抱き締めて眠っている。

 

シェル「って・・・何であのぬいぐるみが?フローナの奴、こっそり買ってたな」


シェルはしゃがみ、怪獣のぬいぐるみをツンツンとつつく。


シェル「なぁ、これって・・・そーゆー事?」


フローナ「zzz」


返事の代わりに聞こえたのは、静かな寝息だけだった。

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