20話 黒き翁、絶望の夜

廃屋の屋上。

 荒れた瓦礫の中、葎、御影、柚葉の三人は立っていた。

 前に立つのは、黒蓮会首領──蓮条 黒翁。


 銀髪が月光に反射し、冷たい瞳が三人を射抜く。

 その存在だけで空気が重く、世界そのものが沈むようだった。


「……来たな、葎」

 黒翁の声は静かだが、全身から殺意が滲む。

 歩み一つで瓦礫を砕き、風を切る。

 動くたびに“絶望”が襲いかかる。


◆◆ 絶望的な開戦


 御影が前に出る。

 「……俺が、抑える」

 腕を構えるが、黒翁は一瞬の間に距離を詰め、

 両手の掌で御影の胸を打ち、背後の瓦礫に叩きつける。


「ぐ……っ」

 御影の体が地面に叩きつけられ、呼吸が荒くなる。


 続いて柚葉が飛び出す。

 「葎、守る!」

 しかし黒翁は、彼女の攻撃を軽く交わし、足元で砂煙を巻き上げる。

 一瞬の隙間に蹴りを入れ、柚葉は壁に叩きつけられ、血を吐いた。


 葎は二人の窮状に胸が締めつけられる。


◆◆ 黒翁の圧倒的力


 黒翁は動きの一つ一つが“死の確定”のようだった。

 御影と柚葉の攻撃をほとんど受け付けず、

 圧倒的な速度と威力で反撃を返す。


 葎が近づこうとするが、

 振り下ろされた大太刀が廊下を割り、足元の瓦礫が飛び散る。

 風圧で葎の体が後ろへ吹き飛ぶ。


(……これが、首領の力……!?)


 胸の奥が凍りつく。

 自分の力の不足を痛感し、

 守るべき人たちが傷つく現実に涙が浮かぶ。


◆◆ 御影&柚葉の重傷


 御影は地に伏し、額から血が流れる。

 左腕の関節が明らかに外れた音が響いた。

 柚葉も壁に張り付いたまま、吐血し、足をひきずる。


 葎の心臓が激しく跳ねた。

 “守る”はずの二人が、逆に彼女を庇おうとしているのに、

 その理不尽さに胸が張り裂けそうになる。


「……まだ……死なせない……!」

 葎の瞳が、夜の闇に鮮烈な光を放った。

 母の遺志と、二人を守りたい思いが混ざり合い、身体の奥から力が湧き上がる。


 しかし――


 黒翁の掌が迫る。

 “絶望”の距離はまだ縮まる一方だった。


◆◆ 瀬戸際の覚悟


 瓦礫に立ち、血まみれの拳を握る葎。

 足元で呻く御影と柚葉を見て、決意が固まる。


(私……ここで倒れられない……

 二人を……母を……守るために……!)


 胸の光が揺れ、意識の奥で何かが目覚める予感がする。

 次の瞬間、この光が“力”に変わる――


 しかし、その力はまだ不完全で、全てを制御できるかは分からない。


廃屋の上に、三人と首領。

 空気は切迫し、夜は深く沈む。

 勝敗はまだ決していない。


 ──だが、葎の覚悟だけは、はっきりと刻まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る