18話 影を断つ刃、紅を纏う誓い

爆ぜる土煙の中、三人は陣を組み直した。

 葎が前、御影と柚葉が左右。

 これまでの混戦とは違い、わずかながら“息”が合っている。


 対するは〈朱の追跡者〉と〈黒蓮の刃〉。

 二人は閃光の影響から立ち直り、ゆっくりと歩みを進める。


「……愉しいな、葎。

 追うほど、逃げるほど、君は輝く」


 〈朱の追跡者〉の朱鷺は、狂気の笑みを浮かべる。

 鞭が蛇のようにうねり、空気を裂いて伸びた。


「黙れ!」


 葎が飛び退くと同時に、御影が影のように前へ。

 鞭を指で弾くように受け流し、朱鷺の懐へ踏み込む――


 だが。


「甘い」


 刹那、〈黒蓮の刃〉羅刹の大太刀が御影の横腹を薙いだ。

 御影の体が宙を舞い、地面へ転がる。


「御影!!」


 柚葉の叫びが響く。


◆〈朱の追跡者〉&〈黒蓮の刃〉、本気の連携


 朱鷺が鞭で牽制し、羅刹がその死角から斬りかかる。

 互いの動きは完璧に絡み合い、隙が一切ない。


 この二人が組んだ時、黒蓮会では“絶対殺傷域”と呼ばれていた。


「二人まとめて殺すのはもったいない。

 特に葎、お前は“捕らえたい”。

 生きたまま、じっくりとなぁ……」


「……最低」


 柚葉が震える声で呟いた瞬間、

華蔓との戦いを経て磨かれた反射で、

一歩踏み込み――朱鷺へ拳を叩き込んだ。


 だが朱鷺は笑うだけだった。


「いいねぇ……もっと絶望させて」


 鞭が柚葉の足元を絡め取り、体勢を崩す。


 そこへ羅刹の大太刀が振り下ろされ――


◆葎の“覚醒の前兆”が再び揺らめく


「させない――!!」


 葎の瞳が強く光った。

 その光は前回よりもはるかに鮮烈で、

彼女の周囲の空気すら震わせる。


 瞬間、葎の踏み込みが爆ぜ、

羅刹の大太刀に“素手”で触れる。


 金属が軋む音。

 大太刀の軌道がわずかに逸れた。


(……今の……私?)


 葎自身も驚くほどの反応速度だった。


 隙が生まれた一瞬――


◆反撃の連携、三人の“連動”


「柚葉、右へ!」


「分かった!」


「御影、お願い!」


 葎の声で二人が動く。


 ✦ 柚葉:朱鷺の鞭を逆に掴み、強引に引き寄せる

 ✦ 御影:朱鷺の背後へ影のように滑り込み、踵落とし

 ✦ 葎:羅刹の大太刀の柄を蹴り払い、懐へ突進


 


 朱鷺の顎へ御影の蹴りが炸裂し、

 羅刹は大太刀を奪われた衝撃で一瞬ひるむ。


◆決着の瞬間


「羅刹……これで終わり!」


 葎が奪った大太刀を半回転させて振り下ろす。

 羅刹は腕で受けるも、その腕が大きく弾かれ、


 膝をついた。


「……見事だ、紫苑の娘よ……」


 羅刹は不敵に笑いながらも倒れこむ。


 一方、朱鷺も柚葉に拘束され、

御影の拳が腹に深く沈み――


「ぐっ……あ……っ……!」


 狂気の笑みが消え、

朱鷺の体が崩れ落ちた。


◆ギリギリの勝利


 静寂。

 荒い呼吸の三人だけが、夜風を震わせている。


「……勝った、の……?」


 葎が自分の手を見つめながら呟く。


「勝ったよ。

 ギリギリだったけど……ね」


 柚葉が汗と涙を拭いながら笑った。


 御影は倒れた二人を見下ろし、

震える腕で大太刀を手放す。


「……次は首領が来る。

 休んでいる時間はないぞ」


 その声はかすれていたが、

三人の中で“覚悟”だけは誰よりも強かった。

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