第20話 まさかの話が続くのだが②

恩師鈴木陽子の話は続く。

「奈緒ちゃん、すごく心配していたよ、最近、全く話していないでしょ?」

(奈緒は、妹だ)(口やかましくて、心配性)

(ちなみに、俺の母校に通う高三)

(おそらく恩師鈴木陽子と、俺のよからぬ噂でもしているに違いない)


「あ・・・奈緒がお世話になっております」

「不出来な妹ですが、目を掛けてあげてください」

(言葉として変だ、俺は文学部失格かも知れない)


「いえいえ、奈緒ちゃんは優秀、言葉の感性がキラキラしていいなと」

「私が特に、気に入っている生徒の一人よ」

(恩師の後ろで、鈴木裕美の声が聞こえた)


「裕美が電話を返せと、怒っているけど」

(知りません、そんなの、反応できない)

「ごめんね、裕美が迷惑かけなかった?」

(いや・・・これも答えにくい)


「いえいえ、きれいな娘さんで」

(ここでも、ボキャブラリーが陳腐だ)

(当意即妙は、俺の場合、死語だ)


「父には連絡いたします、少しお待ちください」

(そろそろ電話を切りたいと思う)


「ありがとう、健ちゃん、楽しみにしています」

(健ちゃん・・・高三の教室みたいだ)

(いくつになっても、恩師は恩師だ)


「裕美がうるさいので、変わります」

(・・・まだ話が続く?)


「田中さん、ごめんなさい」

(でも、声は天使だ)


「いえ、ご心配なく」

(他に用件は、ないはず)


「母はせっかちだから」

(高三から知っているが、うん、とは言い辛い)


「親切で立派な先生でした」

(これでいいのかな、言葉が浮かばない)


「明日の朝、楽しみにしています」

(うわ・・・思い出した)


「わかりました、お待ちしております」

(ようやく、電話を終えた)


(かなり疲れていたけど、親父に電話をした)


「調布の人で、Tフィルの新春コンサートのチケットと、年間パスポートペアシートが欲しい人がいる」


「わかった、すぐに手配する」

(親父は、言葉も短いが、行動も早い)


「年末年始で、マスターの店で弾くことになった」

「だから横浜に帰れない」


「ああ、マスターから聞いている」

「俺も奈緒も出る、母さんも行く」

(・・・家族が揃う?奈緒も出るのか・・・また面倒な)

(ちなみに奈緒は、ヴァイオリンを弾く)


返事をしようとしたら、電話の相手が変わった。

「健ちゃん!クリスマスは帰るの?」

(このやかましい声は、奈緒だ)


「本番が入った、横浜の教会」


「へーーー!行くかな」

(実に・・・面倒な・・・)


「まだ、練習もしていない」


「何それ!誰と?」


「同じ大学の女性コーラスとか」


「彼女なの?ついに?」


「違うって、ピアニストの代役だ」

(妹奈緒の話はいつも長い、しばらく続いた)

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