第10話:突然の別れ。
悠真は舞に自分の想いを伝えたがふたりの関係は特に大きくが変わった
ってわけじゃなかった。
ただお互いに対する気持ちの意識が以前とは違っていた。
もう幼馴染のふたりじゃなく恋人同士なんだ。
ふたりは家で学校で時には映画や買い物にとお互いの愛を深めていった。
舞は、たま〜に耳鳴りがすることもあったが ルシルを連れて来たときほど
激しい耳鳴りは起きなくなっていた。
きっとそれは優馬との愛が舞の心を癒してくれていたからだろう。
そして最近ルシルは自分の体の変化に気付き始めていた。
それは言い換えれば、舞の心から悲しみが少しづつ癒えてきているという
証でもあった。
ある時、悠真から呼び出された舞は悠真の口から信じられないことを告げられる。
「突然なんだけど、引っ越すことになった」
「うそ?・・・どこへ?」
「北海道・・・」
「ほ、北海道って・・・まじで?・・・本当に?」
「おやじの転勤でね」
「ほら、うちはおやじの仕事の関係で、 いつでも引っ越せるようにマンション
借りてるだろ?」
「家族で北海道に引っ越すことに決まった」
「俺には選択の余地なしだ」
「うそだよ・・・そんなの・・・うそだよ」
「せっかくお互いの気持ちを分かち合えたのに」
「ごめんな、遠距離になっちゃうけど・・・」
「遠距離すぎるよ・・・北海道なんて、しょっちゅう会いに行けないし・・・」
「俺だって舞と離れたくない・・・」
「ごめん、しかたないんだ、もう決まったことだし・・・」
舞はなにも言えなかった。
それは他人の家の事情だから舞に入り込む余地はなかった。
ここで悠真を責めても、しかたないことだった。
舞は悠真ともう会えないんだと思うと、ただただ涙があふれて悠真の
顔がもともに見れなかった。
「泣かないで舞・・・」
「北海道に行っても毎日連絡するから」
「俺たち、スマホもPCも持ってるから顔だって見れるよ」
「私は悠真と直接会って触れ合って話をしてたい」
「しかたないんだ・・・」
悠真がきつい口調でそう言った。
少しナーバスになっていた。
「ごめん、俺、動揺してる・・・悪かった」
「引っ越す日取りが決まったらまた知らせるから・・・」
それだけ告げて悠真は帰って行った。
ふたりの会話はルシルも聞いていた。
落ち込んでる舞のところにルシルが来て言った。
「北海道ってところはそんなに遠いのか?・・・」
「遠いよ・・すぐに行ける距離じゃないから」
「じゃ〜悠真についていけばいいじゃん」
「舞も一緒に北海道ってところに引っ越せばいいんだよ」
「簡単に言ってくれるけど・・・お母さんをひとり残して行けないよ 」
「じゃ〜智晴も一緒につれていけばいいじゃん」
「そんなに簡単にはいかない問題なの」
「学校だってあるし、それぞれの生活や意思の問題だってあるんだから
私ひとりでは決められない 」
「おまえらの結びつきって、そんなもん・・・」
「距離なんか関係ないだろ?」
「どこへでも一瞬で行けちゃうルシルには分かんないよ」
「あ、ごめん・・・」
「いいよ・・・人間には人間の事情ってものがあるんだろ?」
「ルシルは、いつでも真っ直ぐだね、考え方が・・・」
「私は背負ってるものがないからね」
「私は自分に都合のいいように生きてるだけ・・・それだけだよ」
舞はルシルがうらやましかった。
でも、舞にとっては悠真の引っ越しは納得できない問題だった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます