第2話
さて、生まれてから十か月はあっという間に過ぎた。というか半分以上は寝ていた。少し動けるようになってまず最初にしたのは、髪の毛の色の確認である。父も母も姉も皆栗色の髪の毛に茶色の瞳をしている。私もそうだろうとは思うが、万が一男爵令嬢のヒロイン定番のピンクという事もあり得るので、確認するまで安心できなかった。確認したら私も家族と同じ色で一安心した。
鏡は高価なようで、母の化粧用に寝室に置いてあるだけだったので、今まで確認できなかったのだ。普段は一応家令(領地の代官兼)のロレンシオとメイド(料理長兼乳母兼その他いろいろの兼任)のグロリアの二人が働いてくれているので、色々世話を焼いてくれている。
生活は苦しいが、父が働きに行っている間、領地に責任者がいないと色々困るのだ。ロレンシオとナタリアは住み込みで食事付きの分安いお給料で頑張ってくれているらしい。父や母よりずいぶん年上なので、彼らが引退する前には私達子供が色々と手伝えるようになっていればいいなと思う。
そうしてすくすく育った私は五歳になった。そうそう、二歳の時に弟のジョエルが生まれた。可愛いけどちょっと憎たらしい弟とは時々喧嘩しながらも仲良くやっている。しかしこの頃から姉が一緒に遊ばなくなり、勉強に取り組み始めたのだった。
この国では貴族は十二歳から三年間王都の学園に行くことを推奨される。家の後を継ぐ者は必須なのだが、その他は推奨されるだけなのだ。お金に余裕のある家は子供全員を通わせるのだがうちのような家は跡取りだけというのが多く、後継ぎのスペアにする次男まで通わせるのが精いっぱいというのが現状だ。
しかし、貴族の家に嫁に行こうと思うとやはり学園は卒業していて当たり前だし、大きな商家に嫁ぐのでさえ学園卒業は有利に働く。
そう、学園に通わないのは大人になったら平民となるという事である。
しかし学園に通うのが跡継ぎだけとなると困るのは国である。王宮で重要な部署で働くには学園卒業が必須だし、騎士も部隊長以上は学園を出ていなければなれない。副隊長までなら学園を出ていなくても実力さえあればなれる(もちろん平民でも)のだが、それ以上には成れないし、功績を上げても爵位を貰えないのだ。
そういう訳で働き手が少ないと、上位貴族の実力もやる気もない子息も雇うしかないのである。
そこで下位貴族の学生の中で学年の成績上位三十人は授業料免除とすることにした。そのうち上位二十人は寮費も免除で、上位十人は学食の食費も免除となる。
上位貴族もいれてしまうと小さい時から家庭教師を付けて勉強してきた者たちが上位独占するのは当たり前なので子爵以下の子供たちに限っての処置となる。ただ、没落寸前の伯爵家なども時にはあるので、証明書を出したら試験に参加できることになっている。
姉はこれを狙って八歳になった年から勉強を始めたようだ。父と母は学園の卒業生なので、その時使っていた教科書やノートなどが残っていた。試験の為の参考書の様なものも少しだけあったのでそれを見ながら独学で頑張ているようだ。
そこで私もジョエルが昼寝をしている間姉の勉強に付き合う事にした。例え五歳でも前世の記憶を持つ身である。一応大学まで出たのでわかる事も多いはずだ。
いや、無理でした。算数は楽勝だったけどそれ以外は前世とは色々違っていました。それにモブの私は学力も普通よりちょっと上の様で大分頑張らないと上位三十人には入れそうにないという事が解りました。頭の良さは上の下くらいにはしてもらっておけばよかったよ。平民になるなら通わなくてもいいのだけれど、学園にも王都にも興味はあるのです。モブとしてなら通いたいのですよ。
それに、学費から食事まで全部免除になったとしても、王都までの交通費(片道馬車で三日かかるらしいです) やら制服、その他教材費や実技の経費等必要になるお金は結構あるらしいです。一人だけが通うなら何とかなっても私とジョエルは一年被るのでちょっと厳しいかもしれません。
そのためには領地の収入を増やすのが一番いいですよね。ってことで農地改革と称して腐葉土と生ごみや馬糞での肥料づくりを始めました。田舎ですので領地の端っこの人が住んでいない場所に穴を掘ってそこに生ゴミ爵位を貰えてて貰って時々魔法で混ぜる。悪臭が無くなるまで頑張って肥料らしきものが出来上がりました。
そう魔法です。生活魔法ぐらいと神様が言っていましたが、工夫すれば色々使えました。って私はまだ五歳で魔法は使えませんけれど、父と母が頑張ってくれました。
学園では生活魔法だけでなく少し上の初級魔法らしきものを教えてくれるそうです。その魔法との相性が良ければ攻撃魔法や結界魔法とか治癒魔法が使えたりするそうですよ。ますます学園に行きたくなりましたね。
肥料を使って作った野菜はいつもより少し大きくそして美味しく育ちました。私の知っている農業知識は連作が駄目って事くらいでしたので、肥料を使っても上手く育たない所は違う作物を植えることをお勧めしましたよ。少しは役に立てたかなぁー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます