第2話「暗闇の下」※ホラー注意

「いやだ、いやだ。電気を消さないで」


「おじいちゃん?」


「寒い。怖い。いやだ。いやだ」



そう言って祖父は亡くなった。


青白い顔をして、絶望したかのような表情で死んでいた。


少女が亡くなった祖父の手に触れると、突如少女の身体がふわりと浮く感覚がした。


気づけばそこは真っ暗闇な世界になっており、少女以外何もないところであった。


ふと、少女は自分の腕に糸が巻きついて、どこかと繋がっていることに気づいた。


その糸を辿っていくと、だんだんと世界が熱くなっていく。


暗闇の中で、ようやく足元を見るとそこには燃え盛る炎がごぉごぉと音を立てていた。



こんなにも恐ろしくて、苦しい世界を見たのははじめてであった。


足元を見て、はじめて少女が糸の伸びている先が炎の世界だと気づいた。



怖い、怖い、怖い。


行きたくないのに糸が少女を引っ張り出す。


逃げようと暗闇をつかみ、細めに少女は糸の先をみる。


そこには亡くなった祖父の姿があった。



いつもカッコよくて優しかった祖父が、苦しそうに泣き叫びながら糸を両手で引きちぎろうとしていた。


おぞましい姿をしたものに捕らえられながらも、必死に必死に糸を切ろうとしていた。



少女は「おじいちゃん!」と叫ぶ。


すると祖父は、世界の苦痛を全て背負ったような顔をして、上を向いて笑った。



「お前は、ここにくるな」




その言葉と同時に糸が切れた。


瞬間、少女は上から引っ張られ浮遊する感覚を味わった。


ハッと気づいた時には、もうそこは暗闇の中ではなく、祖父の部屋にいた。



少女は大粒の涙を零しながら、自分の手を見た。


少女の手は、もう祖父の手に触れていなかった。



青白い、祖父がいた。




「おじいちゃん……ありがとう」



その世界は、真っ暗闇な世界。


落ちた先は……。



「おじいちゃん、おやすみなさい」



それから少女は制服をまとい、身を焼かれていく祖父を見送るのであった。

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