2000文字未満のSS集~恋愛・青春・ホラー・ヒューマンドラマ~
泉花
第1話「パパはうそつき」
私のパパはうそつきだ。
パパは小学校のPTA会長をやっていて、仕事は地元では有名な老舗旅館を営んでいた。
パパにはたくさんの友達がいて、よく昔の同級生の話や誰々に会ったと楽しそうに話していた。
みんなから頼られるパパが誇らしく、私もよく周りにパパ自慢をしていた。
私が小学校を卒業すると、パパもPTAの活動がなくなった。
それでもパパは人気者で、パパのケータイはいつもメールを受信し光っていた。
「おお、またメールがきた! コイツ、いつもメール送ってくるんだよなぁ!」
ニコニコして嬉しそうに笑うパパ。
毎日仕事して、夜遅くに帰ってきて眠るパパ。
お休みの日は一日中寝て、一人でお酒を飲むパパ。
たまに誰かの訃報が入ると「同級生なんだ」と言って、仲良しだったと悲しみながら葬式に参列していた。
ねぇ、パパ。
パパのうそは、寂しいよ。
私が大人になっていくと、うそが見えてくる。
パパに友達なんていなかった。
毎日受信するメールは、地域の人の掲示板メールだった。
受信履歴はその定期的に送られてくるメールしかない。
パパに知り合いはたくさんいたけれど、友達はいなかった。
誰かと飲みに行ったりすることも、趣味の仲間がいるわけでもなかった。
誰かの訃報が入る度、知り合いとしてパパは参列していた。
パパの話は、最近の友達の話ではなく、昔の同級生の話ばかりだった。
パパに友達はいない。
でもパパは友達がたくさんいて、嬉しそうにしている。
地域の人になら誰にでも届くメールを、友達からだと言う。
そんなパパの見栄だらけのうそを知って、私は泣いた。
(パパ。知り合いは知り合いであって、友達ではないんだよ)
そんなこと、パパの笑顔をみているととても口に出せなかった。
今日もパパは嬉しそうに嘘をつく。
パパはうそつきだ。
そんな悲しいうそに、私は気づいてないふりをした。
(パパ。パパに合わせてこうして笑ってる私もうそつきだね)
今日も、明日も、明後日も、私はパパと一緒にうそをつく。
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