第15話 ワイヤー・キャッチ

 「ミートボール確認、Eagle_One」

 「Eagle_One、Roger Ball」

 通信を終えると、もう迷いはない。ただし、万が一、ワイヤーを逃したら即、タッチアンドゴーで上昇に移らねばならない。

 甲板が近づき、スロットルはほぼフルパワーに。艦尾のデッキが一瞬、大きく視界に広がった。フックがデッキを擦り、ガシャン!という金属音が響く。アレスティングフックがワイヤーを捕らえた。衝撃が背中を叩き、体がハーネスに押しつけられるような感覚まで得られるリアリティー。

 機体は急激に減速し、わずか120メートル足らずで完全停止。呼吸を整える。ワイヤーが弾かれ、機体は牽引トラクターに向けてゆっくりと押し出される。

 「Eagle_One、ナイスキャッチ。スポット5へ移動。」

 イーサンの心拍数に対して、無線はいかなる時も絶えず穏やかだ。

 「ワイヤーキャッチ成功!」

 甲板員が両腕を高く上げて合図を送ってくれた。イーサンはスロットルをアイドルに戻し、深く息をついた。金属の焦げた匂いと、海風が混ざり合う。ブレーキを解除し、牽引トラクターに曳かれて、スポット5へと向かう。

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