振り返るな

振り返るな 振り返るな 振り返るな

そう言われるほど振り返りたくなる

寝返りをうつ しまった

反対に即座に寝返り

目がまわる

渦巻きの中に巻き込まれる

昔観たミッションインポッシブルの中でこんなシーンがあったっけ

しばらくはこのまま渦巻のなすがままだ

ようやく出口らしきドアに手をかけて横穴に滑り込む

今度はジェットコースターのような滑り台

奈落の底へ真っ逆さま


御臨終です


どこからか聞いたことのない声で目を覚ます

天井から下を見下ろすと

自分がいる


生きている身体か死にかけか


身体がない魂は

自分という一体性を感じづらい


辛うじて体で支えてもらうのがスジではないか


視線を感じる


目の端に見える


天井の隅には

亡くなったはずのおじいちゃんまで張り付いていた


おじいちゃんは下を指差す


戻れ、とは、なんと無茶な、


でも、半ばヤケクソだ、やってみるか


目を瞑って身体に入る


これこれこれ

こうでなくちゃ、俺の身体だ、肉体だ


天井に張り付いているはずの

おじいちゃんを目で探す


おじいちゃんの姿は消えている

おじいちゃん、ありがとう

生き返りました


心拍数が戻りました、と看護師の声

なんだって、と、医師の声


よく頑張った

父親の声

母の安堵の泣き声

周囲ではハッピーエンドの雰囲気


少し後悔


空襲警報の一斉速報が部屋中に響き渡る


生き返ったらまた戦場か


遠くで空爆の音

ミサイル攻撃か

また大勢の人が

魂となっている


このまま死のうか

生きようか


御臨終です


幻聴か


振り返るな 振り返るな 振り返るな

このまま振り返えらないでおこう

固く誓う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

詩(のようなもの) よひら @Kaku46Taro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画