導きの声
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カイ達リコル海賊団が、
頭を含めた悪党達を制圧するのに30分もかからなかった。
頭と下っ端含めて総勢12人程度。
甲板中央では、
目がぐるぐると渦巻き状で回っている悪党達が、
山積みで倒れている。
「けっ。雑魚共が。
喧嘩売って来たくせに弱過ぎじゃねーか。
話になんねーな」
「さすがだな、カイ。
わざわざ俺が出るまでもなかったぞ。
お前の剣の腕は確実に上がってることは間違いない。
自信持てよ」
「⋯まだまだっすよ、俺なんか」
恥ずかしそうに鼻をポリポリと搔くカイの様子からして、
ゼンに褒められたことは純粋に嬉しいようである。
「ねーねー。
こいつらが目を覚ます前に、
お宝や食糧全部頂いちゃおうよー」
その後、
ナギサの提案で悪党達の船内を物色&捜索することになり、
船長室をナギサ、
二層目をエイジとレオ、
地下にあたる三層目をカイ、
残ったゼンとセンリが気を失っている悪党達の捕縛担当で動くことになった。
「この部屋には何もねーか。
よし、次の部屋探すか」
使えそうになりそうなものがないか、
三層目の階の部屋をカイが念入りに探索していた時である。
『カイ、私の声が聞こえますか?』
カイに呼びかける謎の女性の声がどこからか聞こえてきたのだ。
「誰だ!?」
用心深いカイはすぐに鞘から剣を抜き、
再び戦闘に備える。
しかし、
辺りを見渡すが誰もおらず、
カイ一人だけで人気は一切ない。
『安心して下さい。
あなたの敵ではありません』
「そんなの分かんねーな。
隠れてないで出てこいよ」
『ふふっ、そうですよね。
出来ることならば今すぐあなたの前に姿を現したいのですが、
残念ながら私はまだそれが出来ないのです』
「は?意味分かんねー」
『それよりも、
早く彼女を助けてあげて欲しいのです』
「彼女?」
一旦剣を鞘に戻したカイは謎の女性に対して警戒心はまだ多少あるものの、
敵意が無いと判断したらしい。
眉を顰めながらも、
謎の女性からの次の言葉を待った。
『彼女が助けを待っています。
早く彼女を助けてあげて。
そして、彼女を悪しき者達の手から守ってあげて下さい』
「どういうことだよ。
悪しき者達?
つか、そもそも彼女って誰のことだ?」
カイが誰もいない部屋に向かって質問の声を投げかけるが、
謎の女性からの返事は返って来なかった。
部屋は相変わらずシーンと静まり返ったままである。
「俺にどーしろっつーんだよ?」
イライラ気味に髪をクシャりと掻きながら通路に出ると、
こっちに来いとでも言っているのか、
奥にある食料倉庫の扉が光っていた。
「罠じゃねーだろーな?」
再び鞘から剣を抜いたカイは、
導かれるままに食料倉庫へと向かう。
そして、
ゆっくりと慎重にドアをガチャリと開け、
中へと足を踏み入れた。
「何もねーじゃねーか。
俺をおちょくってんのか?」
パッと見た感じ、
食料倉庫そのものだ。
食料が詰まったダンボールや木箱がいくつか積まれている程度で、
変わった物は特に無さそうと見受けられる。
「ん?あれは何だ?」
引き返そうと食料倉庫から出ようとした時、
食料倉庫内の隅に置いてある長方形の木箱が、
カイの目に留まった。
なぜなら、
その長方形の木箱が光を放っていたからだ。
まるで、
カイにその箱を開けろと暗示しているかのようである。
「何が入ってんだよ。この箱」
カイは剣を握ったまま、
その箱の蓋を開けた。
そして、
箱の中身を見た途端、絶句する。
「!?」
「⋯っ⋯っ⋯」
理由は言わなくても分かるだろう。
猿轡と目隠しをされ、
両手足を縄で縛られたリオナがくの字状態で入っていたのだから。
怯えているため、
ビクビクと体が小刻みに震えている。
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