導きの声

「お、女!?

何でこんなところに女がいんだよ!?」



また、催促するように再び謎の女性の声がカイに囁きかけてくる。



『お願い。

彼女を助けてあげて。』


「あー、うるせー!

分かったよ!助けりゃいいんだろ!?」


「⋯っ⋯っ⋯」


声だけで姿は見えない謎の女性に対して半ばやけくそ気味に答えたカイは、

まずリオナの視界を覆い隠している目隠しを解いた。


その瞬間、

リオナであることを知ったカイはようやくハッとする。



「な⋯っ、お、お前⋯」


「んん⋯」



相当怯えているリオナの視線とカイの視線がぶつかり合った瞬間であった。



「何で、こんなとこにいんだよ⋯」


『彼女は、この世界の平和を守る希望です。

どうか、

あなたの力で彼女を悪しき者達の手から守ってあげて』



ここで謎の女性の声は完全に聞こえなくなり、

リオナと2人きりの空間と化する。



「とにかく縄を解いてやるから、

じっとしとけよ」


「ん⋯、んぅ⋯」


「よし、これでいいだろ」



カイの手によって支えられるようにして上体を起こされたリオナは、

続けて猿轡と縄も解いてもらったことで、

ようやく体に自由を取り戻すことが出来たようだ。



「た、助けてくれて⋯、あ、ありがとうございます⋯」



ポッと顔を赤らめるリオナの様子からして、

カイのことを覚えていたのは明白である。


そんなリオナに対して、

カイは素っ気なく塩対応だ。


「⋯別に。

たまたまだ。

好きでお前のこと助けたわけじゃねーから」


「それでも、

助けてくれたことに変わりありません⋯。

あなたが来てくれなかったら、

今頃私⋯、

どうなっていたことか⋯。ううう⋯」



長い拘束状態から解放されたことで大安心したのだろう。

リオナの瞳から大量の涙がボロボロと流れ始めた。



「おい⋯、泣くなよ⋯」


「だ、だって⋯っ、ひっぐ⋯、ぐすん⋯っ」



リオナの嗚咽が次第にエスカレートしていくことで、

カイもますます困惑する一方だ。



「⋯ったく、これだから女は苦手なんだよ⋯」



対応に困るカイが溜息をついた時、

既に探索を終えたエイジとレオが食料倉庫にやって来る。



「ちょっと、カイ。遅過ぎ問題。

こっち探索終わったよー。

何してんのー?」


「さっさと戻んぞ。

早く続きの酒が飲みてーんだ。

雑魚共に俺の唯一楽しみの酒タイムを邪魔されて、

こっちは機嫌が悪いんだっつの」


「お、お前ら⋯」


「ふ⋯、ふうう⋯っ、ぐず⋯っ、ひっぐ⋯」



泣きじゃくるリオナの対応に困っているカイを目の当たりにしたレオとエイジも、

当然ながら絶句していた。



「てか、カイ。

その可愛い女の子、誰?

さっきまでいなかったよね?」


「お前、まさか⋯、

どさくさに紛れて攫って来たのか?」


「ち、ちげーよ⋯っ!

俺は何も知らねぇ⋯っ!

その箱を空けたら、

この女が縛られた状態で入ってたから、

助けただけだっつーの⋯っっっ!」


「へ〜、ほんと?」


「ほんとか?」



カイなりに必死に端的に弁解をするが、

ニヤニヤと笑うレオとエイジはカイに対して何かを期待しているのか、

疑うことをやめない様子だ。



「うう⋯、ひっぐ⋯っ、ううう⋯」


「るせーな、お前ら。

つか、お前もいい加減、泣くの止めろよ。鬱陶しい」


「カイ、

女の子に対してそんな言い方良くないっしょ」


「だぞ。

だから、いつまでたっても童帝なんだよ」


「おい、こら。

誰が童帝だ。俺は童帝じゃねーぞ」


「てかさ、

この子見たことある!

確か、美女の歌姫って呼ばれてる女の子!」



じーっとリオナを見つめていたレオはリオナに見覚えがあったようで、

何かを閃いたかのように手をパンッと叩いた。



「そういえば、

言われてみれば俺も見たことあるかも」



⋯と、同調するエイジ。



「お前、有名人だったのか」



それに対し、

ポカンとするカイはリオナのことを知らなかったらしく、

まじまじと物珍しげにリオナを見つめている。

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ツンデレイケメン海賊剣士と甘くて危険な大航海 〜A sweet and dangerous voyage〜 あ ま ね ゆ り @Niziiro0506

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