第21話

「リンケージ?」

 レミエルが、首を傾げてサンライトに聞き返す。


「そうそう。

互いの魂を拡張次元を通じ接続して

強化する技術、なんだが。」


 こんな話になったのには、理由があった。

何を隠そう、キョクヤ戦が近くなってきて

私、レミエルは少し焦燥感があった。


 なぜ?

 それは簡単な話で、メビウスの様子が

尋常じゃないからだ。


 それは、ナンバーズという強力な相手を

相手取るからなのか。


 それとも、かつての戦友を相手取ることになるからなのか。

どちらかは分からない。


 けれども、私は

少しでも足手まといになりたくはなかったし

それに、メビウスには

戦いに無事に勝ってほしいと思っている。


 だからこうして、少しでも勝算が上がる方法を

模索してるんだ。


「まぁ、あいつ、、、メビウスは、

リンケージをやりたがらないだろうな。」


「なんでなんですか?」


「そんな事も分かってなかった、って当然か。」

 サンライトは、顔の前に指をたて

私に言い聞かせるように続けた。


「リンケージってのは、互いの魂を繋げるものだ。

つまり、相手の見せたい所も

見せたくない所も全部分かる、スゲー嫌な技術だ。

だから、信頼しようとしている相手と、

もしくは信頼している相手としか

成立しない、そんな技術だ。」


「なんか、怖いんだね。

それ。」


 苦笑いしながらそう言う私に

サンライトは意外そうな顔でこう言った。


「レミエル、お前さん

メビウスのこと、知ってみたくないのか?」


 確かに言われてみればそうかも知れない。


 1人にしたくないと、そう思っているのに

その奥深くの心を、見てみたいと思わずに

あろうことか怖いと、そう思ってしまっている。


「なんで、なんだろう。」


 ポツリとそう言う私に、サンライトはこう言った。


「まぁ、仕方ないことなんじゃないか?

見えない物は怖い、知らないことは怖い。

それは、人間の根底の恐怖だからな。

それに、あいつの過去を知ってるのは、

神宮だけだからな。」


 知らないから怖い。

 それは仕方のないことなのかもしれない。

 だけど、、、私の恐怖は

この恐れは、それだけじゃない気がする。


 悩む私の脳内に、1つの疑問がよぎる。


「そういえば、神宮さんって

何者なの?」


「あいつかぁ、、、。」


 露骨に嫌そうな表情をするサンライトに

私は首を傾げる。


「そんな悪い人には見えないけど、

何かあるの?」


 ため息交じりに、サンライトは答える。


「あいつは、CSC。

言い換えれば、中央最高司令官なんだ。

で、だ。

メビウスとか、その他の奴に

過酷な命令を出してるのも、あいつなんだ。

だから、俺は好きになれない。」


「でも、人殺しも

過酷な任務も必要だから、

命令を出してるんじゃないの?」


「それはそうなんだが、もう少し

ほかのやり方があると、そう思っちまう。

それにな、たとえ必要だったとしても

ガキにやらせる仕事じゃないだろうに。」


「じゃぁ、サンライトがやればいいんじゃないの?」


 目を丸くし、サンライトは少し固まった後に答える。


「まぁ、やってもいいんだけども。

俺はめんどくさいのが嫌いだ、ってのと。

民衆は、人殺しをしない

誰も助けられない人などいない、っていう偶像の

A&Hを夢見てる。

だからさ、表に存在が公開されてる俺が

それをやると、わざわざ隠れて汚れ仕事をやってまで

秩序維持の偶像をたてたあいつには、

顔向けできねぇかな。」


 その事実を聞いたレミエルは、ドン引いたような

そんな顔をする。


「そんな、酷い組織だったんだ、、、ここって。」


「ま、仕方ないさ。

そうでもしてまで希望を見せなきゃ、人間は

生きていけないんだからな。

、、、ところで。

いつまでそこで見てるんだ?

ビャクヤ。」

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