第20話

 大きな影が、持ち上がる。

 大きな、大きな。

 空をも覆いつくすような。


「タウ、危ない!」


 イータが、咄嗟にタウに向かって

押しつぶさんとしている黒い手の攻撃範囲から付き飛ばす。


「なんで、まだ動いてるんだ、、、こいつは!」


「「いいから、こいつを倒すぞ!」」



 声が、響く。


「やっぱり、優しいんだね。」


 どこかで聞いたような言葉が、1人

虚空を歩くように響く。


 昔も、そんな言葉を言っていた人が

隣にいた気がした。


 ずっと、隣に。



「なんなんだ、このバケモノは!」

 ボロボロになった体を引きずり、タウは言う。


「まだ、動けるか?」

 メビウスの声が聞こえ、タウは苦い顔をあげる。


「お前に言われなくたって、、、。」

「ならいい。

少し、隙を作れ。

そしたら、俺が何とかする。」

 後ろで倒れているミューと、イータを介抱している

レミエルに視線一瞬視線を向け、メビウスはそう言う。


「行くぞ、シグマ。」


「「最後のひと頑張りと、行きますか!

行くぜ、クロックアップ!」」


 シグマは瞬時に加速し、シャドウジャイアントの横っ腹を殴り飛ばし

注意を向ける。


「今だ!」


 今の一瞬の隙の間に、シャドウジャイアントの

真下まで接近していたメビウスが、インパクトブレイドの

ブースターを稼働させながら、上へと飛びあがる。


「制限瞬間開放。

鍵よ、解き放て!」


 ブースターによって加速させられた巨大な大剣と、

メビウスの体の内から瞬間的に開放される

二つの力が加わることによった、瞬間的な超破壊力が、

接触の瞬間に放たれる。


 その爆発的な破壊力によって今度こそ、

シャドウジャイアントの体は、風穴が開き

地面へと無造作に倒れ伏す。


「今度こそ、終わった、、、のか?」


「、、、あぁ、そうだな。」



「にしても、なんだったんだ、こいつ。」

 ボロボロになった体で、タウはぼやく。


「おそらく。

クイーンの影響だろう。」

 同じく、少しボロボロになったメビウスが答える。


「司令部、医療班の手配と

後始末を頼む。」

『了解しました。

医療班と、作戦処理班を手配します。』


 少しの静寂の後、タウが言う。


「お前は、クイーンに立ち向かう気なのか?」

「あぁ。

それが、俺の使命なら。」


クイーンと呼ばれるデモンズが存在する。

それについて分かっていることは、史上最大の脅威であること。

そして、その対抗策がメビウスな事だけだ。


「そうか。」


 タウは、立ち上がってこう言った。


「その役目をやめたくなったら

 いつでも言ってくれ。」


 憎しみを込めた瞳で、タウは続ける。


「そしたら俺が、お前を殺してやるから。」

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