③
次の週末。
当然、来た。
電車に乗って一時間弱。
富士駅からとことこ歩いて、今わたしははうとともにY書店の絵本広間にいる。
折よく冬休み子ども向け読み聞かせイベントなるものがやっている。
もともとよく足を伸ばすお店だ。かっても知れている。
「あ。はうくんままー」
「こんにちは」
「こんちゃー」
定期的なお子様読み聞かせイベントなのでけっこう顔なじみが多い。
子どもがなにかを探す姿って、文字通りきょろきょろって感じでおもしろい。
はうは目を大きく開いて広い店内を見回している。
「ぱぱいないねー」
「そうだね」
一日書店員として奮闘していると思ったのだが。
あちこち棚を回っても姿が見えなかった。
奥で作業してるのかな?
なんて思っているうちに、けっこうな親子連れが集まり、Y書店員のエプロンをつけたおねえさんがやってきた。
くまさんアンドうさぎさんのきぐるみさんを両側に従えている。
「みなさんこんにちは!」
「こーんにーちはー」
と唱和するちびっこたち。
「おたのしみ会に来てくれてありがとう。はじまるよのうたでスタートだよ!」
お話会は順調に進んでいったのだが……。
スペースの奥から漂ってくる煙が、気になる。
誰かのぱぱが一人、煙草を吸っているのだ。
はうの顔にも煙あたりそうだな……。
本人絵本に夢中で気づいてないけど、そういう問題ではない。
周りのママもみんな迷惑そう……。
だが、革ジャンに金髪といういかにもな外見のぱぱだ。
めっちゃ、話しかけたくない。
おねえさんも、注意したそうだが、会の途中なのと、みんなの前ということでタイミングを計りかねている様子だ。
「……」
ここはやむをえん。
わたしはそそっと身を乗り出した。
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