②
数日後、なんだかやたら手の込んでいるしゃれたボードとともに夫の聖さんが言うことには。
「アドベントカレンダーを作りました」
板で作られた小窓が25個。
たしかアドベントってドイツとかでクリスマスまで子どもが毎日めくっていくものだよね。
「すごい……」
天使やリースの絵が描かれた窓。
「この中には、お菓子が?」
聖さんは微笑んで、口元に手をあてる。
「いいえ」
内緒ですよと、耳元に口をよせて。
「はうがいい子になるためのミッションを、一日ごと書いていけたらと」
おおお。
感動して、わたしは思わず長身の夫を仰ぐ。
「さすが聖さん! 教育効果ばっちり‼」
「とはいえそんなにかたくならず……家族で楽しむための予定、とかでもいいですね」
顎に手を当てつつ楽し気にそんなふうに呟く。
「わぁ、楽しそうじゃない」
それから、我が家の日常にアドベント・ミッションが組み込まれた。
♡
――12月4日 お皿を拭こう。
「ボクふきふきするよ!」
フフフ。息子よ。まぁ、初日だから、この意欲は当然といえよう……。
「ふきふきふき!」
うん、完璧なのは掛け声だけだけどね。ぜんぜんふけてないけどね。
「はう~、雫さんがついてるでしょ? これだとまだ終わりじゃないんだよ」
「えーそうなんだぁ……」
苦笑して聖さんがとなりにやってくる。
「とはいえ、ふゆさんの日頃の拭き方と、あまり変わりない気もしますが」
「ひどーい。聖さんだって似たようなものじゃない」
抗議すると聖さんは少し頬を染めて、
「俺の場合は……。丁寧にやっているつもりがなぜか、うまくいかなくて」
はなから雑でアバウトなあたしと違うって言いたいんか。
「聖さんって、工作とか大工仕事は得意なのに、なんで家事はだめなんだろうね……」
器用なんだか不器用なんだかわからない人だ。
なんてことをやっていると、はうが急に、
「いーーこと思いついた!」
と絶叫しだしたのでなにかと思えば、大きく息を吸ってふーーーっと、濡れた皿を吹き始めた。
「なにやってんの?」
「デパートのトイレにあるやつ‼」
ハンドドライヤーか?
がっくしとわたしは首をもたげる。
「こういう大ちゃくなとこはたしかにあたし似だわ……」
反省。
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