宅配家族

ほか

第1話 極秘クリプレ

「ままー。サンタさんってだあれ??」


 短き両手を前に出し、とてとてとあゆみよってくる、我が息子。

柊羽生ひいらぎはう。今年の聖夜で、一歳と七カ月。近頃言語能力目覚ましく発達中。


 わたしは思い切り上を向いて額に手をあてつつ、


「あああ。とうとう知ってしまったのね」


 現実から目を背けても仕方ないと、息子、はうに焦点をあわせ、笑顔を作る。



「サンタさんはね、赤い服しか着ない、シカさんに似たトナカイをたくさん飼ってる変なおじさん!」


「ぷっふふ。変なおじさんー!」



 多分意味わかってない癖に、息子は頬を膨らませて両手で抑えるという演出とともに笑っている。



「ふゆさん。嘘はいけませんよ。はうが知りたがっているのだから、しっかりと説明しましょう」


せいさん……」



 リビングからやってきたのは、夫、柊聖夜ひいらぎせいや。長身。37才。けっこうイケメン。


 聖さんはかがみこみ、はうのうすい頭髪をなでながら言った。


「はう。サンタさんはいい子にしてたら今月の24日にプレゼントをくれるんだぞ」



「えーーっ、まっぢでぇぇーー!!」



 はう、そういうときはほんとにー? って言おう。

 一歳児にまじでは早い。多分。


「いい子にしてたら、だよ?」


「するするーー! ボクするーー‼ いい子――‼」


 はうの絶叫が、冬の早朝の我が家に響き渡る。

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