**第一章:任命**

混沌は無ではなく、万物を育む子宮である。言葉に尽くせぬ神聖なる召喚の力が兄妹の魂を包み込んだ時、彼らは裂かれる感覚も、眩暈も感じなかった。まるで一つの部屋から別の部屋へ——より広大な空間へと足を踏み入れたかのようだった。


眼前の光景が次第に凝固していく。


ここには金碧輝煌な穹窿もなく、経文を詠唱する天界の従者も見当たらない。彼らが立つ場所は、凝固した星明かりで覆われた平面だった。


見上げると、ゆっくりと回転する星雲が、生まれたばかりの星々と死にゆく星体を織り交ぜている。


空気——もしここにあるとすれば——は宇宙の法則が持つ最も原始的な力を帯び、冷たく純粋でありながら、無限の生命力を秘めていた。


そしてこの全ての中央に、簡素な造形の玉座が聳え立っていた。まるで「存在」という概念の原石から直接彫り出されたかのようだった。玉座の上には一人の姿が鎮座していた。


紹介も宣言も不要だ。その視線が彼らに注がれた瞬間、その名は魂の奥底に刻まれた――盤古。天地を劈き、万物を鋳造した創世神。


その容貌は混沌たる創世の輝きに隠され、ただ万星の重みを宿す一対の瞳だけが鮮明に見えた——深遠で威厳に満ちつつも、拭い去れぬ倦怠を刻んでいた。


「我が呼びし者よ」


盤古の声は穏やかでありながら、二つの世界の境界に触れるかのように法則の織物を震わせた。宇宙全体を包み込むかのようなその眼差しが、眼前に立つ二つの俗世の魂を審視する。


「なぜお前たちをここに連れてきたのかを語る前に」創世神の声が星明かりの間に響き渡り、疑いようのない権威を帯びていた。「まず、教えてくれ——我が前に立つお前たちは、何者だ?その名を告げよ」


凝り固まった星明かりの中に静寂が広がる。兄は全てを見透かすような視線を受け止め、深く息を吸い込んだ。まるでこれまでの全ての経験と意志をこの宣言に込めるかのように。彼は半歩前に進み、松のようにまっすぐな姿勢で、古びた河床を転がる礫のような重々しい声で言った:


「私は善決。彼女の兄である」


続いて妹も静かに歩み出た。澄んだ瞳には周囲を流れる星の輝きが映り、声は清らかで温かく、氷の下で解け始めた春の泉のように、内なる強さを秘めていた:


「私は千恵。兄の妹です」


盤古は静かに耳を傾け、視線を兄妹の間を行き来させた。万古の歳月を背負ったその瞳に、かすかな、満足に近い悟りの色がよぎった。名前とは、魂の最も根源的な刻印である。この二つの名は、彼が探し求めていたある特質を予感させるようだった。


「善決、千恵。」盤古は二つの名を繰り返した。声は相変わらず平穏だったが、その後の全ての対話の基調を定めたかのようだった。そして、ほぼ残酷とも言える率直さで核心を突いた:


「私は盤古、この世界の創造神である。諸君が見る山河星辰と無数の生霊は、全て我が手によるものだ。」


彼は一瞬間を置き、深い瞳に一抹の諦念がよぎった。


「しかし世界を創造するとは無から有を生み出すことではなく、想像を絶する神力を消耗する。若き日、道法を修めるため、私は他の宇宙の真神から膨大な『創生神力』を借り受けたのだ」


彼は虚空に手を伸ばし、気ままに弧を描いた。瞬く間に、無数の煌めく冷たい光が凝縮し、絡み合って果てしなく広がる契約の網を織り成した。その境界は視界の遥か彼方まで及んでいた。


一本一本の糸には畏敬の念を抱かせる力と束縛の力が宿っている。これこそが神債——根源の法則が証する、反駁の余地なき絶対の約束。


「債は必ず償われねばならぬ」盤古の声には微塵の感情もなく、ただ事実を淡々と述べる。「しかし幾多の劫を経て、旧体制下における世界の生産量は消耗する神力を追いつけぬ。このままでは、この界は…崩壊の危機に瀕するだろう」


その視線は再び、善決と千恵と名乗る兄妹に向けられた。その眼差しは彼らの過去と未来を貫通し、魂の奥底に潜む可能性そのものへと届いているようだった。


「旧世界の病には新たな治療法が必要だ。旧習に固執すれば滅びを招く。私は新たな血と新たな思考を必要としている。無数の生霊と共に新たなモデルを推進し、この膠着状態を打破するために」


言葉が終わらぬうちに、玉座の脇にまた一つの影が現れ、ぼんやりとした輪郭が次第に鮮明になっていった。無数の経緯線が織りなす光の幕を身にまとい、無数の世界の因果の糸が飼い慣らされた銀魚のように指先を絡みながら泳いでいる。これこそ秩序の主。この領域が天地開闢の初めより存在し、古く威厳に満ちた存在である。


秩序の主はゆっくりと歩み寄り、その身に流れる光の糸は歩調に合わせて調和のとれた規則的な波動を帯びた。盤古の方へ軽く一礼すると、その動作には永遠不変の礼儀と敬意が満ちていた。続いて、彼は善決と千恵の方を向いた。その瞳は底知れぬ古井戸のようで、万物を映し出しているのに、波一つ立たない静けさを保っていた。


「諸君が創世神の壮大な招きに応じる前に」――彼の声は盤古のような法則を震わせるものではなく、基盤のような確固たる明瞭さを帯び、一音一音が精密な法則で校正されたかのようだった――「我もまた、我が本源と職責を諸君に明かす必要がある」


彼の視線は平然と兄妹二人を掃う。最も厳格な律法によって彫り出されたかのようなその顔には、余分な感情はなく、ただ純粋な「告知」のみがあった。

「我が名は万全」彼はまず自らの名を告げた。その声は岩のように重く、まるでこの名自体が約束と保証であるかのように。

「この天地が混沌から開かれ、最初の法則が確立された時、私はこの世に誕生するよう託された。私は『秩序』を司り、万物の運行の基盤と枠組みを維持する。『自由』もまた私の管轄下にある。真の自由は、確固たる秩序の中にこそ生じるからだ。そして、あらゆる因果を織り成し、全ての生滅を貫く『運命』の糸も、同様に私が掌握し整える。」


彼は少し間を置き、この三つの権威を融合した本質を、聴く者の意識に沈殿させた。

「ゆえに、私を秩序の神、自由の神、あるいは運命の神と呼んでもよい。名は異なれど、本源は唯一なり。」万全の視線が善決の握りしめた拳と千恵の澄んだ瞳に一瞬留まった。あの常に成文法典のように厳格な線が、かすかに柔らかさを帯びた。「私は万全。この界の秩序の守護者、均衡の維持者である。」


盤古の視線が自己紹介を終えた万全を掠め、言葉に尽くせぬ暗黙の了解と信頼を瞳に浮かべると、再び善決と千恵へと戻り、天地を揺るがすような誘いを発した:


「では、善決、千恵。お前たちは新たなモデルの推進者となり、万全と私と共に歩むことを望むか?」


---


沈黙。


洶湧たる情報の洪水が逆転した銀河のように兄妹の精神を打ち砕いた。創造主、神聖債務、旧体制、世界危機……そして今、秩序と自由と運命を統べる古の神「万全」という名が加わった。この誘いの重みは、もはや凡人の理解を超越していた。


兄・善決の瞳孔が激しく収縮し、思考が奔流のように渦巻く。彼は比類なき機会を見出しただけでなく、「万全」という名が象徴する、創世と並ぶもう一つの極の力――あらゆる「存在」を支える礎を鮮明に感知した。そのような存在と肩を並べる? リスクと機会は頂点に達していた。


妹・千恵の両手は思わず握りしめられた。盤古の視線は彼女に世界の重みを授け、万全の静謐で深遠な眼差しは、その重みを支える形而上的な精密な巨大システムを垣間見せた。使命感の重圧と、この二つの至高の存在から同時に認められた鼓動が、彼女の胸中でより熾烈な炎へと絡み合う。


兄妹は視線を交わした。魂の奥底で激しい無言の戦いが繰り広げられる。憂い、渇望、責任、恐怖……無数の感情が絡み合い、ついに互いの瞳に同じ答えを見出した――壮大な運命に立ち向かう揺るぎない決意を。


この長くも短くも感じられる思索の末、二人は振り返り、盤古と万全に向かって深くお辞儀をした。その姿勢には謙虚さと揺るぎない決意が共存していた。


兄の善決が先に口を開いた。その声は岩のように堅固だった。「両尊者より我ら微末の才を顧みられ、この上ない栄誉です。天地の心を立て、衆生の命を定めることは、本来我らが願うところ。この重責を全うすべく、力を尽くすことを誓います!」


続いて妹の千恵が顔を上げ、星のように澄んだ瞳で力強く言った。「この界を守り、万物を育み、新たな道を拓くことも我らの願い。我らこの責務を担い、二柱の尊者と共に歩み、新たな紀元を切り開くことを誓う!」


盤古は彼らを見つめ、その永遠の霜のような表情がわずかに溶け、安堵の色を浮かべた。万全の深い瞳にも、かすかな、承認という名の微光がよぎった。


「よし」


創世神はただ一言、大局を決した。厳かに立ち上がると、聖殿内に万法の共鳴が響き渡り、無限の創生の光が掌に集結した。


「それならば。ここに、創世神の名をもって新モデルの礎を築き、正式に公布する!」


その眼差しは松明のように鋭く、まず兄である善決に向けられた。掌に凝縮された絶対的な理性と万物の裁定権を宿す黄金の光は、神聖なる印璽へと変化した。


「善決よ!ここに汝に——権限を解き放つ神の名を授ける!」三界の法則を駆使し、万物の争いを調停せよ。「汝の明判の明により、新秩序の規範を立て、旧弊を掃討せよ!」


言葉が終わらぬうちに、釈権の印は宇宙法則の響きと共に兄の掌に降り立った。その魂は神聖なる神体と融合し、神聖なる光が天を衝き、新神の降臨を告げた。


続いて盤古は妹・千恵に向き直った。もう一つの玉製の神璽が現れ、無限のエネルギーと万物の命運を均衡させる力を放った。


「千恵よ!ここに汝に——執権の神の尊位を授ける!」現実の形成と管理の権威を掌握せよ。「汝の聡明なる心をもって新秩序の資源を分配し、揺るぎない基盤を築け!」


執権の印は柔らかくも広大な光の流れへと変わり、妹の体を包み込み、ついに彼女の魂と一体となった。それは資源と運命に対する彼女の権威を象徴していた。


冊封の儀式が完了すると、釈権の神と執権の神は肩を並べて立ち、神聖な威儀が放射状に広がり始めた。


その時、万全が再び一歩踏み出した。彼は新たに任命された兄妹を見つめ、いつも厳しいその顔に、かすかな優しさのほのかな色合いが浮かんだ。

「善決、千恵」彼は直接彼らの名を呼び、声に宿っていた法則の冷たい響きは静かに消え、代わりに、より落ち着いた、兄のような温和さが代わった。「今、我々は共に歩む者となった。我が名は万全、『万事周全』を意味す。本日、汝らの到来を目撃でき、この上なく喜ばしい。我は汝らと共に肩を並べ、この界を守り、未来を切り開く」


言葉が消えゆく頃、兄妹は万全の深淵な瞳の中に、構造化された光の輪、予測不能な嵐、そして流れる黄金の糸をより鮮明に見出した――秩序、自由、運命。三つが彼の内に完璧に融合し、ついに「万全」という名の均衡と静寂へと帰結する。


聖殿の中で、新たな時代が静かに幕を開けた。

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