第一章『英雄の後腐れ』20フィルム目『タスク(課題)』

敵の襲撃が起こった翌日、アリスとアーサーは夕食にサーモンとエビのカルパッチョと大皿モリモリに盛られたミートパスタを追われている様に急いで食べながらある事について話す。


アリス「少年、君はタスクやそれに関する事柄についてどれ程知っているつもりかな?」


アーサー「タスクについてって…あれだろ?偶にしか産まれないなんかの能力を持った奴のことを言うんだよな」


 アーサーは唐突な質問に手を止めるが口にはまだパスタが詰め込まれておりモゴモゴとチンケな回答をする。


アリス「うん、5点だね。100点満点中のね」


アーサー「ああ?それ以外になんかあんのかよ、俺はさっきのもんしか聞いたことねえぞ」


 アリスはパスタの最後の一口を食べ終えると皿をシンクへ片付けるついでに幾つかの紙とペン、それから妙な機械の様なものを持ってきた。


アリス「食事も終わって早々だが君にはこれからタスクについて3つのお勉強をしてもらうよ」


アーサー「勉……強…ッ。なあ、俺は生きてきて一度だってペンを握ったことがないんだぜ?わかるだろ、諦めてくれよ、絶対分かんねえからよ」


 アーサーは引き攣った顔で逃げる様に皿を片付けようとしたが体がいつのまにか『ラズベリーベレー』に縛られており抵抗虚しく椅子に座った。


アリス「勉強とは言っても簡単な情報を教えるだけさ。分かったらしっかり聞いてくれたまえ」


 アーサーは肘を机につけ頭をガシガシ掻きむしりながら小さく「あいあい…」と呟いた


アリス「よし、まず一つ目に知って欲しいことはタスクの分類についてだ。」


アーサー「分類?あれに種類なんてあんのかよ」


アリス「ああ、タスクは主に自己型と媒介型の2つに分ける事が出来るんだ。」


アーサー「自己型っつーのは何となく分かるけどよ媒介って何だ?分かりやすくやってくれよ」


アリス「もちろん説明するさ、自己型はタスクによって自分が能力を持つ事、そして媒介型は簡単に言うと自分以外が能力を持っているんだ」


アーサー「自分以外が能力を持っている…タスクは全員自分が能力を持ってるだろ?なのに自分以外ってどう言う事なんだよ」


 アーサーの質問にアリスはニヤリと笑い懐から3枚の写真を取り出した。


アーサー「コレは……俺らが戦ってきたやつの写真か?1人知らねえ女がいるが」


アリス「そう、この子は私が単独で倒した子だよ。まあそんな事は良くてね、この3人を例としてさっきの分類について話そうか」


 そういうとアリスはまず2人が最初に倒した敵であるフンゴの写真を指した。


アーサー「コイツは……確か選んで消滅させるタスクの野郎だよな?」


アリス「うん、じゃあこの子は自己型と媒介型のどちらに分類されるか分かるかい?」


アーサー「あー、コイツも自分で能力持ってんだから自己型じゃあねえのか?」


 アリスは腕をふにゃふにゃ動かしタコみたくうざったい顔で首を振ってくる。


アリス「不正解なのだよ。思い出したまえ?この子はタスクを発動する際何かを使っていなかったかね」


アーサー「何か使ってた……ッ!!繭だ!アイツは繭の中に入るとタスクを発動できたぞ。」


 アリスは小さく頷き正解に近づいていることを分かりやすく知らせる


アリス「もう正解は分かったね、何かを使ってタスクを発動させる。コレが媒介型タスクの特徴なのだよ」


アーサー「ほーん、なら俺の変身するタスクは自己型なのか?」


アリス「そうだね、他にも私が倒した年齢を操る子は自分で触って発動することから自己型で君の倒したジェクターは葉っぱを媒介にした媒介型だったのだろうね」


アーサー「タスクの分類……つうかお前はどっちなんだ?お前がタスクを使えない事は知ってるけどよ、どんなタスクなのかは何も聞いてねえぞ」


アリス「私かい?君と同じく自己型だね。まあ能力の詳細については後々話すとしようか。今日はそれよりタスクの勉強だ、さて次はタスクの組織ついて知ってもらおう」


アーサー「組織…つったら今俺らを追ってきてる奴らもそうなんだよな?」


アリス「そうだね、私が元々いた15年前までは4つの組織があったが現在は私達を追っている組織も含めて5つある事になるね」


アーサー「5つ……いつかは今敵対してるやつだけじゃなくて全員敵になんのかもな」


アリス「縁起でもないが…そうなるだろうね。まあ、その時が来た時に対応でき様にもしっかり聞いてくれよ。私が知っている4つの組織をまず教えよう」



1つ目はアフリカを主に拠点としている組織、ンデ・ゲオチェロ。名前の意味はスワヒリ語で鳥の様に自由。この組織はタスクで何かをするのではなく自身達が迫害される事なく自由に生きる為、協力するように生まれた組織……だが、厳密にはボスである1人の男を崇拝する為に生まれた組織とも言われている。



2つ目は少し特殊でロシア帝国陸軍と呼ばれている組織だ。その名の通りロシアの陸軍なのだが…ここはタスクの割合が他より以上に多くただの軍隊のはずが大量の武器や戦闘技術、そしてそれらを用いたタスクがいる世界に脅威を及ぼす唯一無二の陸軍となっている。



3つ目はアジア全体に広がっている組織、名をタスク保安協会。日本に本部を置いていて、ここはその名の通りタスクが暴走する事がない様に管理したり、タスクの悪用するものがいればすぐに防衛できる様ヒーローと呼ばれる実力派の有名なタスクが活動している



4つ目は元々私が管理をしていた組織。スノー・ホワイト・ハウス刑務所(SWH刑務所)と言う組織、フランスにある広大な土地を使った刑務所でここにいる囚人は全員が脅迫な犯罪を犯したタスクのみとなっている。とは言ってもタスクで犯罪をするものなんて大体が大きな犯罪を犯すから殆どがこの刑務所行きになるんだがね。


アリス「さて、大体の説明しかできていないが分かってくれたかな?」


アーサー「早口であんま分かんなかったけどまあ良いや、取り敢えずやべー組織なんだろ」


アリス「……うん、まあそうだね。それじゃあ次はタスクの強さについて学んでもらうよ」


アーサー「強さ?んなもんどうやって学ぶんだよ。つーか学んでどうすんだよ」


 アーサーが疑問を口に出すと同時にアリスは先程持って来ていた妙な機械を取り出した。


アリス「この機械はPMと言って、とあるタスクを持った発明家が作ったものだ。タスク本人の身体能力、判断力等の実力やタスク本来の力を測定して100点中で表してくれるんだ」


 アーサーが強さの測定をしてくれる機械に興味津々で顔を近づける。


アーサー「なあ!これって今すぐ測る事が出来んのかよ?やってくれやってくれ!」


アリス「ああ当然だとも、とは言っても期待している様な結果は出ないだろうがね」


 そう言いながら機械のとんがった部分をアーサーに向けてボタンを押し数秒待つとピピッと甲高い音が鳴って画面に数値を出した


アーサー「……14点…?おいおい壊れてんじゃあねえのかよ?うっそだろ、俺が14点?は?マジで言ってんのか…信じられねえぞ。」


 アーサーは想像の5倍は低い結果に酷く落胆していたがアリスの方はまるで分かっていたかの様にケロッとしていた。


アリス「まあ当然だね。良いかい?この数値は点数ごとにランクで分けられているんだ。」


アーサー「ランク?強さに段階があんのかよ」


アリス「そうだね、まああまり落ち込まず聞いてくれよ。まず0〜19点はEランク、つまり君だね。」


 アーサーはかなり落ち込んでいたところにさらなる追い打ちをかけられて頭の位置がより一層低くなっていた。


アーサー「うっせえよ…こっちは傷ついてんだぞ」


アリス「まあしっかり聞いてくれ、Eランクの強さは1人で町を半壊出来る強さと言われているよ。タスクの半分以上はこのEランクに属している」


 落ち込んだアーサーを全く気にしないと言った様子で話を続けるアリスに少し苛つきながらしっかりと内容を覚えようと耳を傾ける。


アリス「続いて20〜39点はDランク。Dランクは1人で都市を壊滅させられる強さと言われていて、今まで戦ってきた3人は全員がここに所属するだろうね」



アーサー「あいつら…全員俺よりも上なのかよお」


アリス「そうなるね、大体強さの指標が分かってきたところで続いて40〜59点はCランク。現在の私が48点だから私はCランクに所属している事になるね」


 それを聞いてアーサーが飛び上がり思わず叫んだ


アーサー「はあ!?お前タスク使えねえのに俺より2つも上のランクにいんのかよ!!」


アリス「私の場合は肉体の強さや経験、頭脳によるところが多いだろうがそれでもこの強さなのだよ。んで、Cランクは1人で国を崩壊させられる強さと言われているね。ここに所属できるのは組織のメンバーでも少し上のものだけだろうね。」


アーサー「国を崩壊させられるレベルって…お前が本気出せばタスクなくても何とかなるんじゃあねえのかよ?」


アリス「まさか、ここからは壁が大きくあるのだよ。良いかい?60〜79点はBランク、私よりも圧倒的に強い存在で1人で大陸を消滅させられると言われている。Bランクには組織の幹部程度であればなれるだろうが…こことそれ以下とではどうしようもない壁があると言われているね」


アーサー「壁……そいつらと会うとお前でもやばいっつーことか。けどよ?お前より一個ランクが下の奴がお前と良い勝負してたんなら意外と何とかなるんじゃあねえの?」


アリス「まさか、出来ても時間稼ぎ程度だよ。けどヤバいのはここからだ。続いて80〜99点はAランク。このレベルになると世界でも10人といない強さになって、指標としては地球を支配できると言われている圧倒的な強さを持つものたちで、組織のボスクラスであればなれるだろうね」


アーサー「Aランク、ここが世界の最高地点。現在における最強のタスクなのか。」


 アーサーの発言にアリスが何を言ってるんだ?と言った風な顔を浮かべて6本目の指を立てる


アリス「まだ6つ目のランクがある。言っただろう?Aランクは80〜99点だとね。」


アーサー「おいおい…まだ上があんのかよ。地球を支配できるレベルだぜ?それよりどうやって上があるんだよ」


アリス「……100点満点を取れたのは過去現在含め3人しかいない。そしてこれから先も取れるものはいないだろうね。」


アーサー「100点、どんくらい強いんだよ?」


アリス「まさしく最強だ。100点を取るものはSランク。絶対的な神と言われる程の強さがあり、いくら100点以下が集まろうとたった1人の100点保持者には勝てない。それくらい絶対的な存在。」


 アーサーが真剣な表情に固唾を呑んでゆっくりと丁寧に気になった質問を吐いた


アーサー「…100点を取った3人って誰なんだよ?」


アリス「3人のうち…1人は私、英雄アリス。100点保持者の中でも圧倒的に強い化け物。そして過去の私だ、他の保持者は嫌でも会う事になるだろうから説明はいらないかな。」


アーサー「何でだよ!?会うんだったら尚更説明してくれよ?じゃねえとヤバいんだろ」


アリス「何も分かっていないな。彼等ってのはどうしようもないほどの理不尽で…最強なんだ。もしも会う事になれば戦うことも逃げることも出来ないのさ。まあ、分かったら覚悟して筋トレでもしておいてね、そうすればもしかしたらコンマ1秒は長く生きれるだろうから。」


 そう言ったアリスはアーサーの皿を持ってシンクまで向かい皿洗いを始めた。

 アーサーは想像すらも出来ない怪物がこの世にある事へ実感が湧かず取り敢えずソファに座りテレビをつけるが、カラーの筈のテレビは見たこともないモノクロテレビに見えてしまった。

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