第一章『英雄の後腐れ』 15フィルム目『整理された迷宮 ホテル・カリフォルニアその②』
アーサーは自身の腕に出来た隙間から寄生虫の様に生え出たジェクターの腕を掴み取ろうとしたが調整の出来てないモグラ叩きみたく直ぐに引っ込んでしまう。
アーサー「クソッ!何なんだコイツ……!?どうやって俺の腕に入り込みやがった、キモッちの悪い野郎だ…ッ」
アーサーは覚悟をして来たつもりだった。フンゴやアリスと言う強者と立ち合いどんな事が起ころうと同時やしない。そう思っていた…しかし目の前に起こる想像以上に奇妙な展開に、動揺が抑えれなくなる。
アーサー「クソッ!…クソッ……。出てこいッ!!それでも出ないっつーんならよお…殴り殺す。」
アーサーは自身の右腕をダンダン殴り続ける。他所から見ればどこからどう見たって異常な行動でしか無いが、手筈をされてか周りにはフロントスタッフすらも居なくなっていた。
ジェクター「何をしようと無駄だ…私のホテル・カリフォルニアによって作られた空間は条件さえ満たせば誰であろうと干渉できない…私ですらな。」
ジェクターは隙間から再び手を生え出す。ゆっくりと取り出される手には装飾の反射を受けて金色に輝くナイフが持たれていた。その腕はナイフをゆっくり上に投げると隙間の中へ隠れた。
アーサー「おお?んなモン当たる訳ねえだろ…。」
アーサーは上から落ちてくるナイフを軽く避けた。しかしたった一本のナイフはカーペットに落ちるかと思われた直前、急激に進行方向を変更する、その刃先はアーサーの右腕へと向かった。
ーーグヂァッ…
アーサー「ーーグガァァッ!!!?」
ーー何だ…?避けたはずのナイフが俺の腕に刺さってやがるッ!コイツのタスクは空間を作るだけじゃあねえのか?
ジェクター「知っているか?人間の血液量は体重の約7%と言われているらしい……貴様の体重を90kgとすれば大体だが6kgの血液があるんだ。」
アーサーは目の前より更に近い腕の中にいる男が急に変な事を言い出すんで戸惑ってしまう。
アーサー「何が言いてえ?さっきっから…」
ジェクター「まあ落ち着け、なあお前…その内の血液がどんだけ減れば人間は死ぬと思う?30%だ、血液量の30%…どんだけか計算は出来ないだろうが貴様はあと1.8kg血を失えば死に至るのだ。」
アーサーは同様により熱くなった体がスーッと冷えるのを感じた。そして直ぐ様ナイフを抜きタスクにより変形させて止血をする。
ジェクター「フム……それが貴様のタスクか…まるで無意味な事をするのだな。貴様はタスク同士の戦いで常識が通用すると未だに思っているのか?随分と愚かな」
ナイフを抜いた時…その後アーサーは後ろへと投げ捨てた。確かに後ろへと投げたはずだったそのナイフはアーサーの腕に再び付き纏った。
アーサー「グァッ……!?んだコレ、さっきっから何で付き纏ってきやがる。」
ジェクター「コレで分かったか?貴様はこの先何をしようとその攻撃から逃げる事は出来ない。ここで死ねば能力を解除してやるがな」
アーサーは自身からどうしようもなく溢れ流れる血液を意味なく左手で押さえつけてちょっとした決心をした。
アーサー「意味がないっつーのはよお…?ココだけに何をしたって意味がないって事だよな、ああ?だが……こうしたらお前もどうしようも無いんじゃあねえのか?」
ジェクター「……?何をしようと無駄だと言ったであろう。」
ジェクターは恐れを持っては居なくともその興味心により隙間からうっすらと何が起ころうとしているかを見ようとした。そこから見えたのはアーサーが左腕を振り上げている姿だった。
アーサー「なあ……!コレならテメーは何も出来ねえだろ?こうやって…右腕ごと落としちまったらよッ!!」
ーーグジャッ…グジャッ…ジャタンッ!!
アーサーは左腕を変形させ刃物の様に鋭くし右腕を二の腕あたりから数回に分けて切り落とす。
アーサー「ーーグァッッッ!!クソッ!!!やっぱし痛え…」
アーサーは切り落とした右腕を拾い上げようとも考えたがまず怪我を治そうと変形させ、止血まで完全に出来ると逃げる様に近くの階段を登った。
ーーガサッ、ガザガサガザ…
ポトンと落とさせた筋肉質の右腕から小太りの男が久しくその丸っとした容姿を露わにする。
ジェクター「クックック……そうか、そう来たか!ハハ…ハハハハッ!!次に会った時は謝らなくてはな、見くびっていたとな。」
アーサーの発想に一杯食わされた男は右腕から小さな木を生やし葉を撒き散らした……突如、葉に触れた所から男の姿が消えてしまう。
アーサー「ーーハァッ!!ハァッ!!…ここまで来れば暫くは追いつかれねえだろ。それよりもアイツのタスク…空間を作ってその中に物が引き寄せられる能力。もしかしたらよお……アレでホテルのどっかに隙間を作ってその中に麻薬を育ててんじゃあねえか?」
アーサーはどこに隙間があるのかを探そうと廊下のカーペット下や上に大きく飾られた照明、部屋の至る所を探すがどこにも隙間らしきものが見当たらず片手で頭を掻きむしる。
アーサー「何処にもそれらしいもんがねえぞ……だがタスクを持った奴がわざわざ出待ちしてやがったんだ…ここに麻薬はあるんだ、絶対にな。」
ーーヒュゥゥッ……
アーサーは何処からか冬の風が通った冷たさを感じ、直ぐ様構えを取り周りを見渡す。
すると目の前から緑色の集合体がカーペットを渡ってくるのを発見した。
アーサー「コレは……葉っぱか?そういやさっきも見たぜコイツ、そうだ……コレだ!!コレを見た瞬間に俺の腕にアイツの能力が掛かったんだ。」
ーーパチパチパチ
ジェクター「いやはや…実に見事だ!なに、タスクの正体が分かったことでは無いぞ?先ほどの貴様の発想、そしてそれを実行した勇気。私はそれを賞賛しよう。しかし…残念だよ君が敵である事がな、こんなにも優秀になりえる人材を私の手で殺さなくてはならない」
瞬間、いつのまにか壁にできた隙間からナイフが飛び出してくる。
アーサー「ドラァッ!!……グッォ!?」
アーサーは全方位から襲いかかるナイフを叩き落とそうとしたが右側への攻撃に対応できず幾つか刺さる
ジェクター「やはり片腕では不利なのだな…それともここから更に何かを見せてくれるのか?なあ、私は今勝手に期待を膨らましているんだ。きちんと答えてくれよ」
アーサーは脇腹に刺さった3本のナイフを抜きジェクターに向かい投げつける。
しかしタスクによってかナイフは当たったと思われた瞬間に姿を消した。
アーサー「やっぱりそうなんだな…その葉っぱに触れるとそこに空間が出来る…今はお前自身に空間を作って吸い込ませた。そうだろ?コレで納得いったよ」
ジェクター「そうか…理解できておめでとう。そしてさようなら」
ジェクターが何らかの方法で攻撃をしようとした瞬間にアーサーが腕を上げ、静止させるようにポーズを取る。
アーサー「待てよ……やっと今納得がいったんだぜ?お前らが何処に麻薬を隠しているかがなぁ……!!」
ジェクターの顔が歪む。瞬時にブラフかとも考えたがその目線に正解を感じとり直ぐ様攻撃に身を移す。
右腕に生えた木から葉を散らしアーサーの足元へと緑の群れを押し寄せる。
アーサー「オイオイッ!!当たる訳ねえだろ?もうそれがヤバいってのは分かったんだからなぁ!!それよりもよお……今、急に攻撃したのは俺の予想があってるって事で良いんだな?」
アーサーはニヤリと笑い客室のドアノブをひたすらに殴り壊し始めた。
ーーバキバキッ、バキバキャッ!!
ジェクター「貴様ァッ!!?今直ぐにそれを止めろお…ッ!!」
アーサー「カハッ!やっぱし正解だぜ!!お前はドアノブの鍵を入れる場所に隙間を作ってやがった…通りでそれらしい空間が見つかんねえ訳だな。最初っから隙間のある場所に空間を隠しているんだからよ」
ジェクターは焦りながらも距離を保ち続け葉を散らした、既に意味がないと思われたそれも大群の成すと流石に恐怖を感じた。
ジェクター「貴様……すでに勝ったつもりだろうがまだ終わっては居ないぞ…ここで殺さなければいけない理由ができるしまったのだからな。」
そう言うとジェクターは壁に作った隙間に身を入れまた新たに作った隙間へと移動をする。
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