第09話 序章

「ふう…」


遥は4月初めの出来事から、お見合い、そして桜花の転校という行事を終え、一息ついていた。


「いろいろあったな」


でも呪いのことは全く解決していない。


母は魔法のことを知っていた。

やはり母を問い正すべきだろうか?


スマホを手に取り、私に呪いをかけたホワイトマン、いや高橋悟のメッセージを開く。


アクセスしてみるべきか…?


その時。


「やー遥君、いやもう遥ちゃんかな?元気でやっているかな?僕のお願いを聞いてくれたら、呪いを解いてあげてもいい。どうかな?」


馴れ馴れしいメッセージが届いた。

返事をすべきか…いや母にこのことを伝えるべきか?


少し思案し、ええい!と、送信した。


「魅力的なお話です、ぜひお聞かせください、高橋悟様」


さあ、どう出てくる!


「僕の名前を知っている?葉子君から聞いたんだね。じゃあ話が早い、僕は赤い石を探しているんだ。赤い石の保管場所を教えてくれないかな?そうすれば、呪いを解いてもいい」


赤い石、確か魔法適性を感染させる石だったな。


「赤い石、その名前は聞いています。ですが厳重に管理されていると聞いています。私に手に入れられるでしょうか?」


「手に入れる必要はないよ、所在さえつかめればこっちが動く。君はあたりをつけてくれればいい」


赤い石、そんなに重要なアイテムなのか…。

それを使って何をする気なんだ…?


「あなたはそれを使って何をする気なんですか?」


「それはね、とても正しいことだよ」


正しいこと?けれど信用ならない相手だ。

手に入れても渡すべきではない。


ここはひとまず。


「わかりました、私も女性になんてなりたくありませんから、探りを入れてみます。約束は守ってくださいね」


「交渉成立だ、吉報、期待しているよ」


また忙しくなってしまった。

しかし、男に戻るにはこの手段しかない。


まずは、いろんな情報を母から聞き出さなくてはいけない。


「正直にお願いするか…」


----


朝、三人で食事をとっているとき。


「お母さま、本日お時間をいただけないでしょうか?」


遥は真っ直ぐに葉子の目を見て言った。


「大事な用ですか?」


「はい、とても大事なお話です」


「わかりました、今夜、時間を作りましょう」


「桜花はお勉強頑張りなさい。この間のテスト、よくありませんでしたよ」


「はい、お母さま」


----


放課後


「お兄様、今日は先に失礼します」


「どうしたの?いつも一緒に帰りたがるのに」


「お母さまから勉強を頑張るように言われましたから、参考書を買って帰ろうかと」


「それなら仕方ありませんね、気を付けて」


「お兄様こそ気を付けてくださいね。人通りの少ない道を歩いちゃダメですからね!」


「私これでも男なんですよ、おかしなことを言って、ふふふ」


(お兄様のこういうところが危険なんだよな)


「いいですね、人通りの少ない道は通らないでくださいね」


「わかりました。桜花の言うとおりにします」


「ではお先に!」



教室から出た桜花は、猛烈な勢いで家に戻り自室にこもった。


「マイク!マイクはどこ!!あった!!」


「カメラは…これだ!」


息を弾ませながら機材を一つずつ確認していく。


「お兄様の秘密、絶対に聞いてやる!」


盗聴グッズを隠し持ち、桜花は葉子の部屋に忍び込んだ。


----


「お母さま、遥です、参りました」


「お入りなさい」


部屋に入ると葉子は静かにソファーに腰かけていた。

遥は向かいに座り、息を整えた。


「それで、大事な話とはなんのことですか?」


「教えていただきたいことがあって、魔法のこと、それとお父様のこと」


葉子の顔が少し強張る。


「孝さんのことではないですね?」


「はい、本当のお父様のことです」


葉子はついに時が来てしまったのだと知った。


「気になっていたのです、魔法のことを伝えられた時、死者が出たと、あの時お母さまは悲しい表情をしていました」


「そう、そんなところを見られていたのね」


「話しましょう、あなたにはいつか伝えないといけないと思っていました、今がその時のようです」


母は静かに話し出す。

始まりの魔法使いの話を。



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ここまで読んでくださってありがとうございます。

連続更新はここまでで、次回からは金曜日20時、週一更新に戻ります。

じっくり読んでくださっている方がいて、とても励みになっています。

これからも、ゆっくりですが続けていきますので、よろしくお願いします。

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女の子らしくしないと本当に女の子になっちゃう呪いにかけられた私は男の娘になった ロイヤルロード @loyalroad

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