第03-B話 高校デビュー

「実は、休む前にショッピングモールに行ったら、『女の子らしくしないと本当に女の子になっちゃう呪い』をかけられてしまったんです」


「はい?」


「呪い?まさかそんなことありえないだろ?」


大塚は自然な反応を返した。


「私の髪、これ地毛なんです。二日、たった二日でこの長さになってしまいました。呪いを嘘だとは思えません」


遥は髪を手に取り、軽く撫でる。


「綺麗な髪」


平沢は美しい髪に見とれている。


「少し触ってもいい?」


「どうぞ」


平沢はゆっくりと手を伸ばし、遥の髪を撫でる。


「本当につやつや、枝毛一つない。綺麗な髪」


(遥君の髪に触ってる私!)


「でもその言葉遣いはどうしたんだよ、おまえ丁寧な言葉遣いだったけど、そこまでじゃなかっただろ?」


「?」


遥は何を言っているのかわからないという顔をして。


「私は何も変わっていませんよ?ただ制服が女子のものになっただけ…だと思うんですけど?違いますか?」


(まさか、あのおばさん、千葉を洗脳してるんじゃ…)


「そうだったかもな、俺の思い違いだ、きっと」


「おかしな遊馬君(笑)」


(そこがもうおかしい!完全に女子だ!)


「遊馬君、お弁当それだけ?バランス悪そう」


遊馬の弁当に目をやると、茶色率の高い、いかにも男子らしい弁当だ。


「わたしのサラダ分けてあげる」


(やっぱり女子だ)


「いや、遠慮しておく」


「遥君、あ、遥ちゃん?」


「私はこうなっても男ですから、遥君がいいです」


「じゃ、遥君。今度、髪を結ってあげるね。家に行ってもいい?」


「はい、いつでもどうぞ。」


「じゃ、ID交換しようよ」


「うれしいです、初めてのID交換」


(やったぞ私!遥君のIDゲット)


「俺もいいか?」


「喜んで!なんてことでしょう、いきなり二人もアドレスが増えるなんて、とても嬉しいです。あれ、なんか知らないアドレスがいつの間にか増えてる。知らない人…」


「怪しいアドレスには返信しちゃだめだよ!遥君、危ないよ!」


「ホワイトマン?」


(あ、あの時、呪いを掛けられたとき私はスマホを使っていて、気を失って…このアドレスあの白スーツの男?)


「誰か分かったの?」


「いえ、気のせいです。気を付けますね」


(約束するのは今しかない!)


「遥君、じゃあ今度のゴールデンウィークじゃだめかな?」


「はい。予定は空いています」


「やった!」


「遊馬君もどう?久しぶりに遊びに来ない?」


(平沢の気持ちを知っていると、邪魔をしてはいけない気がする)


「俺は勉強があるからな。遠慮しておく」


「さすが特待生ね」


「まあな、成績落とすと立場ないからな」


「じゃあ遥君、あとでIDで連絡して細かい日を決めよう」


「はい。待ってます」


----


帰宅すると葉子が待ち構えていた。


「遥、どうだった?」


「みんな普通でした。心配しすぎだったかもしれません」


「そう、よかったわ」


「はい、よかったです」


「それはそうと、ちょっと大事な話があるの」


「お母さま、どんなお話ですか?」


「お母さん今度のゴールデンウィークにお見合いすることになったの」


----


一瞬何を言っているのかわからなかった。


「はい?」


「だから、お見合いするの。私」


「わ、わかりました、良い相手だといいですね…」


「何を言っているの?あなたも顔合わせするのよ?」


「なぜ私まで!?」


「お互いに子供がいるからに決まっているじゃない。顔合わせしたほうがスムーズでしょ?」


「でも必ずお見合いが決まるとは限らないのでは?」


葉子は少しうつむき、目つきが変わる。


「千葉家としての務めです。お見合いはただの形式、結婚は決まっているの」


「そんな時代錯誤なこと…」


「千葉家はそのような家系なのです、あなたには伏せてきましたが、あなたも家に縛られているのよ、覚悟はしておきなさい」


「でもゴールデンウィークには約束してしまいました」


「それは申し訳ないわね、しっかりとお詫びして。次回にしてもらって」


「でもお休みは長いし、その間に調整すれば…」


「だめです」


(だってあなたを調整しないといけないから)


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