第2話 恋に溺れた社長令嬢

料亭の中では、彩り豊かな自慢の料理が次々と運ばれてくる。


姫花は料理を堪能しながらも、つい星夜に目線をやってしまっていた。


(背が高くてかっこいいし、笑顔が素敵だな。)


ふと星夜が姫花に目線を移しそうになるのを感じ取ると、姫花は慌てて目の前の食事に視線を反らした。


(危ない、見てたことバレちゃったかな?)


(何でこんなにドキドキしてるんだろ?)


所在なく焦っている姫花に気づいた天人が星夜に話をする。


天人:「ごめんね、星夜くん。娘は普段はもっとおしゃべりなんだけど、今日は緊張してるみたいでまるで別人だよ。」


姫花:「ちょっと、お父さん!」


天人:「冗談だよ。ところで星夜くんは仕事は何をしているのかな?」


星夜:「小学校の教師です。」


天人:「へぇ、学校の先生なのか。偉いね。」


星夜:「いえ、昔から子供が好きで教師になったんです。」


彦野:「星夜、天人は若い女性に人気のブランドOrihimeの社長なんだよ。だから姫花ちゃんは社長令嬢だな。」


星夜:「そうなんですね。『Orihime』の名前は聞いたことがあります。」


姫花:(もしかして、社長の娘というだけで嫌がられないかな。)


姫花:「あっ、でも私も父の会社の商品企画部の主任として働いているんですよ。」


天人:「そう、姫花は昔から服が好きでね。この会社に入ってもらった。でも、デザインのセンスが全くなくてね。」


姫花:「ちょっとお父さん!」


姫花が顔を赤らめながら天人に注意をしている光景を、星夜は穏やかな気持ちで見ていた。


星夜:「姫花さんはお父さんと仲が良いんですね。」


姫花は恥ずかしそうにうつむいた。


星夜は優しく微笑んで姫花に声をかけ、おもむろにスマホを取り出した。


星夜:「姫花さん、今度よかったら二人で会いませんか?」


姫花:「えっ…はい。」


姫花は結局、星夜と目を合わせることができないままだったものの、その手はしっかりと連絡先を交換していた。

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