バリキャリ社長令嬢が恋に溺れ、最強のバリキャリになる

甘井 サト

第1話 社長令嬢の初めての恋

「この夏、20代女性のトレンドを取り入れた商品のデザインについてもう少し検討したいのですが。」


織田姫花おりたひめかはまとまらない会議をまとめあげた。


大手アパレル会社『Orihime』の商品企画部の主任。芯が強くて明るい、才色兼備の28歳。


彼女は、誰もが知る社長令嬢だ。


コネ入社だという事実はあったが、その仕事ぶりを前に、誰も悪く言う者はいなかった。


「もう少しOrihimeらしさを感じさせるように、アクセントをつけた方が良いと思うの。」


姫花が手がける『Orihime』は、若い女性をターゲットとしたブランドで、「大人でクール」をコンセプトに据えている。


打ち合わせが終わると、創業者の織田天人おりたてんじんが、姫花を食事に誘う。


「今晩、一緒に食事をしないか?」


「あら、急に改まってどうしたの?」


「少し話したいことがあるんだ。」


「仕事のことじゃなさそうね。」


天人の口ぶりから、仕事のことではないとすぐにわかった。


「私はまだまだ仕事で頑張らないといけないから、恋愛とか結婚とかは考えてないよ。」


姫花は天人にまっすぐな気持ちを伝えた。


「姫花ももう28歳だ。それに今まで彼氏の1人も連れてきたこともない。」


「もう、うるさいな。放っておいてよ。」


「そこでなんだが。父さんの友達に息子がいてな。ちょうど姫花と同い年なんだ。」


「一度会ってみてもらえないか?」


姫花は会う気はなかったが、それでも父親の真剣な顔を見ると、断るのが申し訳なく感じてきた。


(断る気満々だったが、こんなに真剣に頼んでくるのも珍しい。どうせ友達にでも頼まれたのだろうが…)


「わかった、会ってあげるから今日の晩御飯は私の好きなお寿司にしてよね。」


娘に押されて二人は高級寿司店に向かった。


***


ー 数日後 ー


天人はタイトなスーツ姿だ。姫花は無駄のない仕立てのベージュのパンツに白のブラウス姿で天人の友人を待っていた。


時間になると二人の男が現れた。


どちらも黒のスーツ姿であったが、若い男は痩せて背が高く、その着こなしは見事だった。


天人:「こちらはお父さんの知人の彦野さんだ。」


彦野:「姫花ちゃん、初めまして。彦野と言います。」


彦野は姫花に目をやり、笑顔でお辞儀をすると隣にいた息子を紹介した。


彦野:「こちらが息子の星夜せいやだ。」


星夜:「初めまして。彦野星夜です。」


星夜は緊張した雰囲気のまま、父親にならってお辞儀をした。そのとき、一瞬だけ星夜と姫花の目線が交差した。


姫花の胸の鼓動が高まった。


天人:「初めまして。私は織田天人といいます。」


天人が挨拶を終えると、天人が姫花に目で合図を送る。


姫花:「初めまして。織田姫花です。」


姫花の胸の鼓動は鳴りやまなかった。


彦野は場の雰囲気が少し重く感じた。


彦野:「おい、織田、腹も減ったし、堅い挨拶はなしにして、そろそろ中に入ろうじゃないか。」


彦野がそう言うと四人は料亭の中へと入っていった。

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