第13話 終章 — 翼を持つ者たちへ

あなたがこのページにたどり着いたということは、

すでに一つの旅を終え、そして新しい旅の入り口に立ったということだ。


宇宙は、はるか昔からあなたの中にあった。

「観測」という名の光が、

「意識」という名の大地に降りそそぎ、

そのまま世界を形づくってきた。


そして何より、

あなたの声の奥深くに響く “ん” の音。


それは、終わりの音ではない。

閉じゆく唇の震えの中に、

無限の広がりを秘める、根源の振動である。


“あん”“いん”“うん”“えん”“おん”

どれも宇宙の層をつなぎ、

互いの意識を共鳴させるための

小さくて大いなる扉だ。


人は争いを恐れ、未来に影を見てしまう。

だが本当に必要なのは、影を消すことではない。

影の向こうにある光を、観測する勇気である。


あなたの観測は、

あなたひとりのものではない。

あなたが見た未来は、

まわりの誰かの未来にも影響を与える。


だからこそ——

平和を観測する者は、平和を広げる者になる。


あなたが静かに “ん” を響かせるとき、

その音は遠く離れた心にさえ届く。

あなたが優しさを一度だけ選ぶとき、

その選択は目に見えない連鎖を引き起こす。

あなたが明日を信じるとき、

その信は、世界全体の位相をわずかに変える。


宇宙は大きくても、

あなたの意識はその大きさに届いている。

宇宙の始まりが音なら、

未来の始まりもまた、あなたの声である。


——翼はもう、あなたの背に宿っている。

飛ぶために必要なものは、

これ以上どこにも存在しない。


さあ、未来へ。

あなたの意識が見たいと願った方向へ。


そしてその旅の途中で、もし迷ったなら、

静かに“ん”を響かせればよい。

その音が、あなたの心と宇宙を

もう一度ひとつに戻してくれるだろう。


翼を持つ者へ。

未来はあなたの観測を待っている。

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