第2話 プロローグ②
「証言します。 我々は普段からアメリア嬢に対する彼女の悪行の数々を目にしました! 」
エドワード様の横に並ぶように男達が並びました。その並んだ姿に私は思わず歯噛みをしてしまいました。
「ラウル様、ローランまで・・・・・・! 」
並び立った方々はこの国でも注目を集める地位の子息様達でした。
ラウル様は王都を守る近衛騎士団団長のご子息です。好青年と呼ぶべきです。陽の当たり方で黒髪にも見える深い緑色の髪、蜂蜜色の瞳は、今は鋭くイザベル嬢を睨むように細められています。
一歩、引くようにして立つ溜息を零す程に美しい彼はローラン。大人しく落ち着いた色合いの金髪に赤茶色の瞳を伏せ気味にしている彼は貴族ではありませんが、大きな影響力を持つ商会のご子息で特待生として入学していました。
いずれも学院では注目を集める者ばかりで、息を呑んでしまいました。唖然となりながら私は彼等を見据えます。
「アメリア嬢へ嫌がらせをしていた生徒から話を聞いた。すると、 あなたに弱みを握られ、嫌がらせを無理やりやらされたと白状したぞ」
義憤に駆かられたように強い口調でラウル様がイザベル嬢を糾弾します。
「自分の手は汚さずに、弱い立場の人にやらせるなんて・・・・・・あんまりだ」
首を左右に振りながら残念そうに告げるローランに、一部同意するような声が紛れ始める。それがキッカケだったのか、周囲からイザベル嬢へと向けられる視線に鋭い気配が増えていくのを私は感じました。そんな空気の変化を感じたのかイザベル嬢は叫びます。
「私は、そのようなことを指示した覚えはありません! 」
「見苦しいぞ、イザベル嬢! 貴方に指示されたと、そう涙を流しながら訴えた令嬢もいたのだぞ⁉ 」
非難するかのように叫ぶラウル様の声が私の耳によく通りました。すると会場内から同調するかのように『そうだ』と続く声が嫌でも耳に入ってきます。思わず私は周りの声に信じられない思いで視線を巡らせてしまいました。
「ここまでだ、イザベル」
「今までの行いを悔くい、アメリアへと謝罪せよ! イザベル・ド・クレア! 」
エドワード様にそう言われると、私と、イザベル嬢の視線が合いました。彼女の表情は驚愕から憤怒へと変わっていきました。唇を噛みながら私を睨むように見据えています。
「─アァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 」
それは、断末魔の叫びのようでした。イザベル嬢は最後の抵抗をするかのように会場中に響く大きな悲鳴をあげたのです。そして、次の瞬間、彼女は糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちてしまいました。
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