1-2 英雄出棺?

 目が覚める。

(あれ、どうして寝てたんだろう)


「まったく英雄が居眠りですか」

 立派な髭を蓄えた、ローブ姿の男性に声を掛けられた。

「構わない。ずっと眠っていたのだからな」

 中央から少年の声。玉座や派手な装飾品からすると、どうやら彼が王らしい。


「一体、この状況は?」

 怠い。というか、全身骨みたいにバッキバキだった。

 まだ寝ていたい。今なら、永遠に眠っていられそう。

「今日は君の出立の儀だろう。魔王が復活して、王国を中心とした英雄の復活。なんだか頼りないが、お前を英雄として扱わねばならぬ事情がある」

「俺が英雄って、冗談だろ?」

 何言ってんだよ、と思いながら、自分の手を見てみる。


 クッソ汚い骨だった。

(は? 俺、骸骨ってこと?)

 黄ばんだ骨。関節も骨。指も骨。

 全部骨。大事なものは何もなかった。

(中途半端に、肉っぽいのが残ってるところがあるな)


 ビジュアルとしては最悪。英雄というか、誰がどう見ても、敵キャラでしかない。

「骨しかないじゃんか! 英雄が骨ってどういうことだよ!」

「残念ながら、肉体の再生までは出来なかったようですね」

 何やら話し合っている様子を見るに、ローブ姿の男性は宰相のような人物で、その隣でコソコソとやってるのは、執事の代表のような人物だった。


「なんで骨だけで動いてんだよ。おかしいだろ」

(喋ってんのもおかしいけどな!)

「英魂再臨の儀の影響です。英雄は時間の代償として、肉体の大半を失ったのです」

「それさ、ただ死んでただけじゃね?」

「とにかく貴方は英雄です。王国の誇りであり、魔王軍への勝利の象徴」

「誇りってお前、埃被ってそうな死体なんだが」

 話によると、推定三百年もの。江戸時代は丸々通過。

 というか、骨なのに知覚できるってどういうことだよ。

「どう考えても、失敗したんじゃね?」

「いいえ成功です。王国が成功と言えば、それは成功なのですよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る