塩対応なポンコツ彼女を振り向かせたい
お茶の間ぽんこ
第1話「休み時間の話」【表】
高校に入学して早々、同じクラスで気になる女子がいた。
塩波さんだ。いつも一人だけど、逆にそのスタンスが僕の性癖にドンピシャだった。
それに周りの生徒は話に上がらないけど、長い黒髪を耳にかけて読書に没頭して、たまに窓の外を眺める彼女の振る舞いがとても美しくて可憐に見えた。
塩波さんのもとに近づいて話しかける。
「何読んでいるの」
声をかけてきた僕を一瞥するが、髪をかきあげてスンとすました顔をする。
「なんだっていいじゃない」
素っ気ない態度。それがさらに僕の好奇心を駆り立てる。
どうしても何を読んでいるか気になってひょいとのぞき込む。
挿絵と文章がちょっと見える。「花束を抱えた王子たちが私に迫ってくる」という一節が読めた。挿絵にもイケメンな王子たちがお姫様に求婚しているシーンが描かれている。
「へえ、塩波さんはそういうの好きなんだ」
てっきり文学作品を読んでいると思っていたけど、知的そうに振舞っている塩波さんが逆ハーレムもののラノベを読んでいると分かって、知らない一面が垣間見えたことに少し嬉しくなる。しかし、塩波さんはそういう系が好きなのだろうか。
「…」
内容を覗かれて嫌そうな顔をみせる。少し強引すぎたかなと反省した。
「…別に」
そうつっけんどんに小さく呟く。顔に見せないだけで恥ずかしがっているのだろうか。
それが何だか面白くて掘り下げたくなった。
「別にって、じゃあ何で読んでるの」
僕の質問に再び口を噤んで、しばらくして淡々と言う。
「これは…そう、市場調査よ。昨今のライトノベル小説のトレンドをおさえるために仕方なく読んでるの」
市場調査。聞きなじみのないワードが飛び込んできて奥が知れないと思った。
「へえ、将来ラノベ作家志望だったり?」
呑気にそう聞いてみる。
「…まあそんなところかしら」
塩波さんは塩らしく応える。
そして物珍しそうに見る僕の視線に耐えかねたのか、睨みつけるような目で僕に言う。
「…ジロジロ見られてたら本に集中できないのだけど? どこかいってくれる?」
僕は圧倒されて「ああ、ごめん」と言って自分の席に戻った。
塩対応に振舞われてショックだったけど、ますます塩波さんのことを知りたくなった。
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