第9話 同行!荷物持ちで壊滅の旅路
協会の朝。
受付嬢が疲れきった顔で書類を差し出した。
「今日は……“荷物持ち任務”です。
新人パーティの遠征に同行して、荷物運搬と支援をお願いします……
(壊さないで……ほんとお願いします……)」
バルク「任された!!筋肉の本領を発揮する時だな!」
フィオナ「重たい荷物ですの? わたくしも手伝いますわ♡」
受付嬢(“荷物”が無事に帰ってくる未来が見えない……)
⸻
遠征前の街門。
新人パーティ三人組は、既に不安げ。
新人A「……その……荷物は繊細な物が多いので……気をつけて……」
新人B「ポーション瓶とか魔道具とか、割れるとやばいやつ……」
新人C「……ていうかなんで僧侶と神官が荷物持ちに……?」
バルクは笑って親指を立てる。
「任せろ!荷物ならまとめて運んでやろう!」
新人ABC(((まとめるって何!?)))
⸻
旅路開始。
新人たちは慎重に歩くが――
バルクは巨大な荷物袋を“片手で”持っていた。
新人A「え……重くないんですか?」
バルク「これくらい羽根みたいなものだ!」
新人B(羽根……? 俺ら三人分より重いんだが……)
フィオナは横で優雅に歩く。
「わたくしも瓶類をお預かりしますわ♡
割るつもりはありませんのでご安心を♡」
新人C(逆に怖ぇ!!)
⸻
森に入る。
トラブルはすぐに起きた。
新人B「魔物だ!前方にスライム!」
新人A「荷物守ってくれ!」
バルク「任せろ!!」
スライムが跳ね、魔法薬入りの袋へ迫る――!
バルクは荷物袋をブンッと振り上げた。
新人ABC
(((え? 袋で殴るの!?)))
ドゴォォォォ!!
スライム、霧散。
荷物袋、中で“ガシャァァン!!”
新人A「瓶の音ォォォ!!?」
新人B「酸性ポーション混ざったらやばいんだよ!?!?」
バルク「安心しろ。ポーションは粉々になっても害を為さない!」
新人C「害以前に存在が消えたんだよ!!」
フィオナは別の方向で問題を起こしていた。
「まぁ♡スライムが残した粘液……これ、疲労回復に良いんですのよ♡
皆さま、どうぞ塗ってくださいまし♡」
新人A「うわあああ触りたくねぇ!!」
新人C「回復するのそれ!?精神削れるわ!!」
⸻
さらに奥、険しい崖に到着。
新人B「ここ……荷物崖から落とすわけにいかないな……」
バルク「案ずるな!拙者がまとめて運ぶ!」
新人A「いやだからその“まとめて”って――」
バルクは三人の荷物袋を全部束ね、背負った。
ギギギギ……!
新人C「縄が悲鳴上げてる!!」
バルク「問題ない!」
そう言ってバルクはジャンプした。
新人ABC
(((なんで飛ぶ!!?)))
ドォオオオン!!!
バルク着地、地面陥没。
三人の荷物袋、弾け飛ぶ。
新人B「ポーション袋の中身ィィ!!?」
新人A「魔道具が……魔道具が内部で衝突して魔力火花出してる!!」
フィオナは拍手していた。
「まぁ♡ 荷物が躍動しておりますわ♡」
新人C「踊ってるんじゃねぇ!爆発しそうなんだよ!!」
⸻
最終目的地、丘陵地の野営地点。
新人B「最後の道具……せめてテントだけでも無事に……」
バルク「任せろ!」
広げようとした瞬間、
ビリィィィィィィ!!!
新人A「破れたァァァ!!?」
バルク「……む? 力を使いすぎたか」
新人C「テントを破壊できる僧侶がどこにいるんだよ!!」
フィオナは平然と微笑む。
「では野宿ですね♡
大地の抱擁は健康に良いのですよ♡」
新人ABC(((帰りてぇ……)))
⸻
任務終了。
新人たちは泣きながら協会へ走った。
・荷物損害:87%
・精神損害:120%
・テント:破壊(修理不能)
・ポーション:全滅
・魔道具:動かなくなったり爆発したり個性派揃いに
受付嬢は報告書を見て頭を抱えた。
「荷物持ちって……荷物を持つ仕事ですよね……?
なんで荷物の“生存率”が敵より低いんですか……?」
バルクは胸を張る。
「無事に運んだぞ!!」
新人ABC(((無事って概念どうなってんの……)))
フィオナは満面の笑顔。
「次もぜひご一緒に♡
荷物を壊さない方法……今度こそ研究しますわ♡」
(※たぶん研究しても壊す)
こうして荷物持ち任務は、
本来の目的とは真逆の方向に華麗にぶっ飛んだまま幕を閉じた。
次回――
第10話「護衛!守るはずがなぜか壊れる」
壊すのは物だけではなかった。
常識も、冒険者のメンタルも、どんどん壊れていく……。
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