断片1【ワタシノココロ】
私は冷蔵庫に入っていた
ケーキを取り出し
少しだけ掬って食べる。
ツバキ
「甘い…んだろうな…」
味がしない…
あの日から何食べても美味しいと
思えなくなっていた。
それほど、姉、シヅキが
私の中で大きな存在だったのだ。
「もう…食べれないや…」
食べかけのケーキをラップに包み
冷蔵庫に入れる。
その後、最後に居たであろう
物置部屋に吸い寄せられるように。
鏡が……私を呼んでるような……
そんな時
『ツバキ』
と、頭に響く声
「っ……!?」
(夢で聞こえた声⁉︎)
「だ、誰……?」
鏡の奥から響くその声は、
聞いたことがあるようで、
その姿を掴ませない…。
「誰なの……!?」
私は胸に手を当てて息を整えようとするが、
代わりに胸の奥が強くざわつく。
(……あれ?)
(そういえば、
お姉ちゃんが……消える前も……)
(“同じ事"を言ってた気がする……)
一瞬だけ思い出の断片がきらりと光る。
──夕暮れの帰り道。
──背を向けて歩いていくシヅキ。
──そして、その背中の向こうで誰かが…。
『…ツバキ。』
ツバキ
「お姉ちゃん……なの……?」
鏡が、
呼吸をするように はぁ… と曇った。
その曇りの中心に、
うっすらと
“自分ではない何かの影”が浮かび上がる。
『ツバキ』
私の指先が、
無意識に鏡へ伸びていった…。
……
………
…ここは何処なのだろうか…
鏡に指先を入れて…それで…
私は今、白黒の世界に漂っていた…。
「ツバキ…」
またあの声…
「…誰…?」
その声は
何処か懐かしく感じる。
「ツバキ…」
意識がはっきりしてきた…。
「…おねぇ…ちゃん…?」
私を呼びかけていたのは
シヅキだった。
シヅキ
「貴女は変えなければならない…
この"鏡の世界"を…」
そう言いながら
私に首飾りを着けさせた。
ツバキ
「…待ってよ⁉︎…おねぇちゃん‼︎」
私の言葉を遮るようにシヅキは告げる。
「ツバキなら出来るって
信じてるから…」
その後
無数の腕が私の足首を掴み、
鏡の底に落ちていった…
……
………
場所?????? 医務室
金属が擦れるような音がカランと
響いた。
「……っ、ここは……?」
ぼんやりした視界に映るのは、
薬草みたいな匂い。
白い布、石壁、
それに…個室だろうか…。
どこか昔の世界みたいな雰囲気——。
白衣を着た人が慌てて
個室に駆け寄ってきた。
???
「お目覚めになられましたか……!
よかったです‼︎」
(……病院の先生、
なのかな……?……)
私はまだ頭が回らないまま、
白衣の人は続ける。
白衣の人
「禁忌として立ち寄らなかった
“鏡の場所”から叫び声が
聞こえてきたので、
見に行ったら……
貴女が倒れてたんですよ!」
鏡。そうだ——。
(……鏡に、触れて、それで……)
シヅキの声がした。
知らない声もした。
そして、私は…
無数の腕に掴まれ…落ちた。
六角形の首飾りが冷たく光る…。
「わ、私は……確か……鏡に……」
うまく続きが言えない。
自分でも何を見たのか
分からなくなる。
白衣の人が困ったように
眉を下げる。
「……あそこは冥界と現世を繋ぐ
“境界鏡”です。
普通の人は入れませんし、
触れただけでも危険なんです……。
禁忌の鏡に触れたのなら……
正気の行動ではありませんよ」
(…え……冥界? 現世?
それに…境界…鏡?)
わからない単語ばかり。
でも、
ひとつだけハッキリしている。
——私はあの時"シヅキ"を見た…。
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