第2話ギルド職員
私は金髪の少女と着替えて職場へと向かった。
服装は、現代のフロントの受付嬢と似たような服だった。
ふと思った――
(あれ、私この少女の名前聞いてなくね?)
ギルドまでの道のりは何も話さなかった。
無言で石畳の道を歩くだけ。
とても気まずい空間に私は耐えきれなかった。
「あ、あの君って名前何だっけなぁ……アハハ」
そう言うと、金髪の少女は歩みを止めて私のことを睨みながら言った。
「……はぁ?何言ってるの?私の名前はエマだけど。もしかして忘れたんですか?」
エマは至って冷静な声で言った。
まるで氷を口の中に入れているような視線で。
その声は、私の心に刺さった。
今まで私の人生自分からあまり話しかけたことなかったのになぁ……
そんなことを思っていると、エマはすたすたと再び歩き出した。
私がまださっきの会話を引きずって立ち止まっているとエマは数メートル先で止まり振り返って言った。
「いかないの?早くしないとおいてくよ」
「……待って!おいてかないでエマぁあああ」
彼女の名前を叫びながら、私はギルドへと向かうのだった。
***
ギルドにつくと、なぜか仕事内容だけスルスル思い出した。
転生した神様からの特典かもしれない。
受付の仕事を発行して、山みたいな書類を処理する――要するに地獄。
そして、目の前に広がる光景は地獄だった。
隣に酒場があるせいか、酔っ払った冒険者だらけだった。
受付窓口に、体格のいい男がズカズカと近づいてきた。
酒臭さが空気を押しのけてくる。
「おい姉ちゃん、これ受注したいんだけどよ」
「は、はい!──あ、その……依頼内容を確認しますね……」
手が微妙に震える。絶対にバレてる。
「声ちっさ。もっとシャキッと言えねーの?」
「す、すすすみません……」
目は合わせられない。ただ、依頼書の字だけを見つめる。
男はため息を一つついて、こちらを覗き込んだ。
「……まぁいいさ。さっさと終わらせてくれりゃな」
「あっ、はい!今すぐ処理しますので!」
私、今めっちゃ顔引きつってる気がする……
困り果てた私を見たエマが駆け足で私のもとに来た。
「冒険者様!そういうことをされると困ります!冒険者ライセンスを剥奪しますよ」
そう言うと、流石に怯んだのか舌打ちをして睨むようにして去っていった。
エマは私の顔を見ていった。
「大丈夫?吐き気とかない?」
「……ん、わからない。初めてだったから」
「そうだよね……怖かったよね」
そう言い、エマは背中を擦って慰めてくれた。
(あれ、私別に慰めてほしいとか言ってないのに……)
これが、『普通』?
今までにない経験に私は少し感動を覚えたのだった。
その日の夜――
エマと私は日中の受注した依頼書を処理していた。
何をするのかと言うと、予備の紙に書き写すこと。
書き写すの理由は、スペアを作るためだった。
私は思う。
こんな人と話さない時間はもっとも好きな時間だ。
一人で黙々とやることが楽しいなと思っているとエマが言った。
「あなた、早くない?前までもっと遅かったのにどうしたの?もしかして中身入れ替わった?」
エマは冗談のように言ってたが私は怖かった。
実は中身が変わっていることに気がついているんじゃないかと。
まぁ、今そんなことを思っても無駄か。
「……実はね。こういう作業好きなんだよね」
「へぇー、意外ね。この仕事終わったらさ、ご飯食べにいかない?美味しい店知ってるからさ」
「え?いいの」
私は思わず聞き返した。
今まで友人と食べたことなどなかった。
そんな寂しい私の人生についに花が咲くか?
「いいに決まってるじゃん。私達友達だよ」
嬉しかった。
(ともだち……!!)
その言葉を聞いた瞬間思わず涙が溢れそうになった。
私は、今日一番の声で返した。
「そうだよね!私友達だもんね」と。
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