異世界転生したら、ギルドの受付嬢でした ―勇者でもチートでもない、忙しすぎる毎日―

宵原りく

第一章静かな違和感

第1話異世界転生

 私の名前は、鈴木凛。可愛らしい名前をしているがクラスでは目立たない陰キャオタク女子高生だった。

 毎日、オタク女子友達とゲームの話や好きな小説な話をする日々。

「あの、ゲームやった?」

「うん……ものすごくやりごたえあって面白かったよ」

 

 一軍陽キャ目が会うと目をそらしてしまう日々。

 当然、クラスに馴染めなかった。

 


 日が落ち、教室には淡いオレンジ色の光が差し込んでいた。

 私はいつものように荷物をカバンに詰め、教室を足早に出た。


 学校の校門を出るといつもとは雰囲気が違った。

 夕日がいつもより濃く、まるで空がゆっくり燃えているみたいだった。

 風もないのに、街全体が静かにざわついているように感じた。

「……不思議」

 思わず、小声が漏れた。

 周りに誰も聞かれていないことを確認しながら足早に帰路についた。


 道端に、ぽつんと白い猫が座っていた。

 夕日の色を反射して、毛並みが淡く金色に見える。

 あんな猫、このあたりで見たことがない。


「猫ちゃん、どうしたの?迷子?」


 しゃがんで声をかけると、猫はそっぽを向いて歩き出す。


「あ、待って!」


 私はつい追いかけてしまった。子供みたいに両手を伸ばして。


 抱き上げた白猫が微かに鳴いた瞬間——

 風を切る轟音が耳を裂いた。


 振り返った視界の端で、トラックのヘッドライトが白く弾けた。

 


 ***


「いてて……」


 頭を撫でながら起き上がった。


「そうか。ここが天国か」


 目を開けると、白……というより“光”だけの空間が広がっていた。

 上下の感覚すら曖昧で、足元だけが不思議と柔らかい。

 ここが神様のいる場所なのかと胸がざわついた。

 地平線の向こうまで真っ白でここが神様のいる場所なのかと興奮していると……


「……すみません」


 突如どこからか女性の声がした。

 この何も無い空間でどこから声が聞こえてきているのだろうかと思っていると目の前にふわりと光が揺れ て、女神様らしき人物が現れた。

 白いドレスは神々しいのに、どこかそわそわした動きで落ち着きがない。

 アニメで見た万能の女神……とはちょっと違う気がする。


「なんで、謝ってるんですか?」


 私は女神様に聞いてみた。

 すると、女神様は気まずそうな顔をして言った。


「私の飼ってる猫が、人間界に逃げちゃいましてね……」


 猫……?


 私は少し前の出来事を思い出すと答えはすぐにあった。


「もしかして、あの白い猫ですか?」


 そう言うと、女神様は小さく頷いた。

 そして、どこからか黄金に光る杖を取り出して言った。


「その……まぁ。死んでしまった代わりと言ってはなんですが転生させますね」


 ん?


 展開が急すぎて全く理解ができない。

 なにかもっとワクワクする感じで次の世界とかの説明をしてくれるんじゃ……


「あの、唐突すぎませんか?何かもっとねぇ……?」


 女神様は首を傾げて頭にはてなマークを浮かばせているような表情をしていた。

 

 え、もしかして私夢を見すぎてた?


「なんですか?」


 女神様が表情変えずに言った。


 あっ……この人だめだ。

 絶対ポンコツな女神様だ。絶対そうだ。


 私は、心のなかに思った。


「では、次の世界でもがんばってくださいね」


「え?」


 女神様が言うと、周りが淡い黄色い光が舞い始めた。

 そして、目の前が白い光で覆われふわっとジェットコースターの急降下のような感覚を感じながら目をつぶるのだった。



 ***


 目を開けたら、そこは見知らぬ天井だった。

 ゆっくりと起き上がりあたりを見渡すとそこは共同の部屋だった。


 隣には、金髪の少女が寝ていた。

 ベッドから降りて部屋の端にあった立ち鏡で自分の容姿を確認した。


「……まぁ、めちゃくちゃ美人なわけ無いか」


 当然ながら顔は普通の顔立ちをしていた。

 前世が、前世だからなぁと思い老けてしまうのだった。

 そして、一番の喜びはお胸が少し大きかったことだ。

 

 すると、隣で寝ていた金髪少女が起きてきた。

 私を見て言った。


「起きてたんだ。アリス」


 私は、全くこの世界の記憶がないため頑張って前世で取得した会話術で……


 あっ、私陰キャだったんだ。


「あっ、おはよう」


「なんで、いつも起きるの遅いのに今日は早いの?」


 なんで早いの……と言われましても。


 ていうか、この世界の転生した体の人どんだけ朝弱かったんだが……


「たまたまよ。目が冷めただけ」


「そう?じゃあ着替えていきましょう」


「着替えて?」


 オウム返しをすると、金髪の少女は困惑しながら言った。


「何言ってるのアリス。着替えて職場行くよ!」


「職場?」


 私は彼女の言っていることがわからなかった。

 どの職業に着いているのかまったく予想できなかった。


 だが、次の言葉を聞いて絶句するのだった。


「ギルド行くよ。受付嬢の仕事。もう忘れたの?私達働かないと死ぬくらいお金ないんだから」


 まじか……


 しかも、金欠。ギルドの受付嬢。


 私が一番苦手とする他人と接客する職業だなんて……

 てか私声小さいんだよ!?


 私の異世界生活どうなるんだあああああ!!!

 

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