第3話 真理値測定ツール
私は興味本位で考え始めた。
人間の起源を確かめる最も簡単な手法は地層をさかのぼる考古学のアプローチだ。
神話や民族の歴史をさかのぼってもよいけど、そのやり方には明確な失敗がある。
【神】を第一原因とする神話体系分類は、構造上の問題で必ず【神】に行き着く。だから人間の真のルーツを探すにあたって、神話体系はひとつも当てにならない。
循環論を用いる輪廻観の宗教体系と心理学の集合無意識論も、無限後退を解消しない時点で論外だ。「0」は分数の分母にできない。バグの原因は最初から決まっているよね?
たとえば義務教育の教科書レベルで言えば、神話体系のルーツは大河の文明・・・メソポタミアの文明に行き着く。神話と天文の世界だ。
ならメソポタミア文明と前身のシュメール神話が人類の共通のルーツなの?
まさか、そんなわけがないよね?
シュメールの前身には狩猟民族の文化があり、さらに昔には氷河期の時代がある。
氷河期の前に、人間と猿の祖先がいなかったのか? いや、ふつうに類人猿がいたはずだ。
人間のルーツと分岐を考える時、類人猿の話題は避けて通れない。
サーベルタイガーが実在する太古の話だ。
類人猿の祖先が分岐する前、私たちの祖先は木の上で暮らしたはずだけど、この危険すぎる環境で、どうして木の下に降りられたのか? そもそも氷河期以前なら、木の実や果実の食料にはまったく困らないはず・・・
はたして彼らは
どうやって脳を肥大化させたのか?
どうやってハイカロリーを手に入れたのか?
きっかけは???
「気持ち悪」
ここで私は人類のルーツと分岐に結論を出したが、まったく気持ちの良い話でないので、これ以上はなにも考えず忘れることにした。ひまな人は考えてみれば良いと思う。
人類の哲学歴史問題はともかく。
私にとって直近の笑い話は
日本人のノーベル賞の受賞内容だった。
【宇宙で魚や生き物を養殖する技術?】
についての研究内容だ。
正直覚えていない。バカすぎて見流したので、違うかもしれない。
宇宙に物資を打ち上げるコストや熱量(エネルギー)のロスを考えたら、可能か不可能か以前に資金を与えてはいけない研究内容だ。
ニュースを見た時は、
「へえ、資金繰りのフィルタリングが機能してないのね? みなさん給料泥棒〜」
と結論づけて、私は職務に励んだ。
しかし今の感想は少し違う。
ひょっとしてこの連中、まさか本当に物事の論理構造がわかっていなかったの? ノーベル賞を受賞する研究者と審査員が本当に???
あえて希望的観測をすれば、『現実的な無意味を理解した上で研究資金を継続して得るために変な研究をした』という詭弁が導かれる。
もちろんこれはあくまで私の想像だ。
研究者が普遍的に論理構造を理解しているか否か、それは詰問しなければわからない。
しかし、私はふと思考実験を思いつく。
人間普遍の論理に対するメタ理解。
仮にその事実を日本人に限ってのみ精査するのであれば、絶好の素材がある。
純粋な論理構造のみで完成したゲーム。
完全解析が不可能な組み合わせ総数を持ち、AIを用いて研究されるボードゲーム。
つまり【将棋】。
つまり、このボードゲームは人間の・・・
日本人の知能程度を調べるための
完全な真理値測定ツールに使えるはずだ。
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