【短編】世界征服カノジョの野望!〜畜生風味を添えて

二見あい

第1話 人の罪はすべて酒

 夜見よるみまぼろは冬の季節で凍えていた。


 さ、寒いッ!!!

 エアコンで暖をとっても、

 血流を絞って静脈を1ミリに収縮させても

 寒いものは寒いっ!!!


 機械語も

 0と1の2進法も

 A or not Aの二分法も

 暖を取るには役に立たない!!!


 知らない。知らない。なんにも知らない。

 私はなーんにも知らなーい!!!

 水、飲まずにはいられないわ!!!


「そういえばお酒を飲むと

 ポカポカするって本当なのかなー?」


 と、暖房の設定を変えながらふと思う。

 善は急げ。

 私は厚着をして、近所の酒屋にお邪魔した。

 ビールは寒くなるからパスね? 不味いし。


 ど れ に し よ う か な ?


 指先で迷う私の目に、

 ふと安酒のパッケージが見つかる。


 ヘネシー700ml。お安いブランデーだ。

 40も度数があれば、気紛れになるかな?

 

 私はボトルを購入し、帰宅後にさっそく、

 ヘネシーをマイグラスへ注いだ。

 風情はない。しょせん安酒だ!!!


 サイダーで割って少し甘みをつけて飲む。

 私はもともとお酒が好きでない。

 飲んでも美味しさがわからないし、酔っ払った家族や親戚、他人の赤い顔を見るたびに反面教師としか思わなかったからだ。


 1時間と30分をかけて

 ヘネシーをボトル1本飲み切る。


 安酒だからおいしくない。

 ポカポカもしない。まあ当たり前か。

 安かろう悪かろうとは、正しい格言だ。

 しかし、このとき。

 私にはひとつだけ新しい発見があった。


「お、私、酔ってる???」


 思考がふわふわする!

 それは私にとって生まれて初めての・・・

 生まれて初めての、『酔い』だった。


 へえ、これが酔いなんだ?

 確かに少し気分がいい。

 30年の人生で、初めての経験だ。

 しかし・・・と、私は思う。


 私が知る現実の認識とズレがある。

 チューハイで赤い顔になっていた家族。

 日本酒で酩酊めいていしていた親戚。

 飲み会で騒ぐ上司と同僚。


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


 ボトルのラベルを確認する。

 目の前にあるのは、

 ヘネシー700ml。

 度数40のブランデーだ。 


 あたりまえだがボトルは空っぽだ。

 あいつらは、コレを飲めるのか?


 A or not A


 つまり、すなわち・・・

 私は自分が気づかなかっただけで・・・


「私って、ひょっとしてお酒強いの???」

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