ぷらたんが来てから

きゅうりプリン(友松ヨル)

冒頭

「……え」


全身に力が入らない。身体がふらふらと、メトロノームみたいに揺れている。何が起きているのか脳が追いつく前に、膝が折れ、そのままアスファルトへ倒れ込んだ。


鼻のあたりがじんわり濡れている。受け身が取れなかったし、きっと血が出ているんだろう。アスファルトの冷たさが妙に気持ちよかった。このまま溶けて、道路の一部になれたらいいのに。


そのくらいの甘えは、許してもらえるくらいには頑張ってきたはずだ。


どうか、神さま。

私をここで終わらせてください。

そうしたら、明日、会社に行かなくて済むのに。


ポヨン、ポヨン、とゼリーが弾むような不思議な音がする。

その音はだんだん近づいてきて、私の前でぴたりと止まった。


「だいじょうぶなの……? 血ぃ出てるなの! 誰かー! きゅーきゅーしゃ呼んでーー!」


ふさふさの毛玉みたいな生き物が、短い手足で必死に私を道路の端へ引っ張ろうとしている。


ああ、なるほど。

これは、あの世ってやつなのかもしれない。


そう思ったら、ふっと安心して、急に眠気が押し寄せてきた。


少しだけ……寝よう。あの世では楽しく過ごせますように……。

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