私の創作論~物語を作るうえで大事にしてること~

Neru°

読者を惹きつけ、自分の物語を貫くために その1

小説、漫画、映像作品、脚本──創作にはさまざまな形がある。しかし、どんな形式であっても“作品を生み出す”という行為の本質は同じだ。自分の内側にある世界を外へと形にし、誰かの目に触れる場所へ送り出すこと。そのとき僕が心がけていることは大きく三つ──「読者を惹きつけること」「まず自分が作りたいものを作ること」「タイトルは直感で決めること」である。


この三つは、華やかなテクニックや高度な技法ではない。でも、創作の核にある“熱”を支える確かな道しるべだと思っている。ここでは、その三つについて丁寧に語っていきたい。


■ 読者を惹きつけるとは、「一度でも目に入る作品を作ること」


作品がどれほどおもしろくても、どれほど丁寧に作られていても、“読まれなければ存在しない”。創作活動の最大の壁は、この「最初の一瞬を掴むこと」だ。


僕が強く意識しているのは、とにかく “一度でも目に入る作品にする” ということ。投稿サイトでもSNSでも、画面には膨大な作品が並んでいて、ほとんどの読者はそのうちの1%ですら目に触れていない。そんな中で、自分の作品を見てもらえる瞬間があるだけで、創作者としては十分すぎるほど嬉しい。


だからこそ最初に必要なのは、内容の前に インパクト だ。出だし一行の力、設定の奇抜さ、キャラクターの強さ、タイトルの尖り──どれでもいい。作品のどこかに“引っかかり”があれば、その瞬間、読者はページを開く。


よく「人を惹きつける文章を書け」と言われるけれど、それは半分だけ正しい。もう半分は、“読者の視界に入る位置まで作品を押し上げる努力” である。見つけてもらえなければ始まらない。だからこそ、創作の初手はインパクト作り──僕はそう考えている。


■ 自分が作りたいものを作る──作品の熱量は作者の“好き”から生まれる


読者受けや流行を無視しろと言いたいわけではない。ただ、流行に合わせるあまり“自分が本当に作りたいもの”を見失うと、作品はどこかで必ず鈍る。筆が止まる。感情が死ぬ。そしてその停滞は、読者にも伝わってしまう。


だから僕は、創作を始めるとき 「まず自分は何が好きなのか」 を真っ直ぐに見るようにしている。アクションが好きなのか、恋愛が好きなのか、SFや異世界ものが好きなのか。それとも日常系、ミステリー、人間ドラマ──ジャンルは山ほどあるけれど、“自分が自然と惹かれる方向”は必ずある。


そしてもう一つ大切なのは、自分の気持ちを作品に入れること。嬉しかった瞬間、悔しかった記憶、誰にも言えなかった感情、胸の奥で燻っている憧れ──そういった自分の“生活の破片”を物語に落とし込むと、キャラクターが呼吸を始める。嘘のない感情は読者の心に必ず届く。


“作りたいものを作る”とは、単に好きなジャンルを選ぶだけではない。


自分の人生・価値観・喜び・痛みを物語に紛れ込ませる行為 でもある。


好きで書いている作品は、必ず熱を帯びる。その熱こそが、読者を惹きつける最大の武器だ。


■ タイトルは深く考えつつ、最後は直感で決める


現代の創作において、タイトルは“作品の中で最も読まれる部分”だ。本文より先に読まれ、表紙より先に目に入る。つまり、タイトルは常に作品の最前線で戦っている。


最近のトレンドでは、あらすじをそのままタイトルにするスタイルが一般化している。「○○したら××だった」「△△な俺が□□する話」──こうしたタイトルは理解しやすくて目に入りやすい。ジャンルや内容が即座に伝わるメリットもある。


しかしその反面、どうしても “量産型の印象” が強くなってしまう。良くも悪くも見慣れた構造で、他作品との差別化がしづらい。似たタイトルが並ぶ一覧では、埋もれてしまう危険もある。


だから僕は、最終的には 直感 を信じてタイトルを決める。心が「これだ」と反応する言葉は、説明がなくても強い力を持つ。直感で選んだタイトルは、往々にして作品の雰囲気や温度感を最もよく表してくれる。


ただし誤解してほしくないのは、“直感=適当”ではないということだ。タイトルは短い言葉で世界観を伝える技術であり、同時に読者の記憶に残るインパクトも必要だ。


説明的すぎて埋もれるタイトル も、意味不明すぎて伝わらないタイトル もどちらもNG。


考え抜いたうえで最後に直感で決める──このバランスが理想だと僕は思っている。


■ 創作とは、自分の世界をこの世に“翻訳”する行為だ


創作をしていると、ふとした瞬間に「これは自分の中のどこから出てきたのだろう」と不思議になる。架空のキャラクターたちが勝手に動き始め、ストーリーが勝手に未来を形作る。何もないところに世界が立ち上がる。その瞬間、創作はただの作業ではなく、ひとつの“生命活動”に近い感覚すらある。


だからこそ、創作は自分の内側を外の世界へ翻訳する営みだと思う。誰にも見せてない気持ちが形になり、知らない誰かの心に届き、共鳴し、場合によっては人生を変えることすらある。


作品は、一人で書いているようで、一人では完結しない。読者が触れた瞬間、作品は初めて“物語”になる。だからこそ、作品に込めた熱も迷いも痛みも、必ず誰かに届く。


創作には苦しみもある。迷うし、止まるし、時には自分の才能を疑う日もある。それでもページを重ねていくと、ある瞬間に「書いてよかった」と心の底から思える。創作とはそういう営みだ。


インパクトを意識し、自分の好きと向き合い、直感でタイトルを選ぶ。たったそれだけで、作品は確実にあなたの色を帯びる。


あなたの中には、すでに作りたい物語がある。あとは、それをこの世界へと送り出してあげるだけだ。

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